Agartha=The underground ruin
Diva of the lonely
LaLa
LaLa-La-La LaLa-La LaLa- La-LaLa-La-
LaLa La-La
La- LaLaLaLa La
LaLa-La- La-La-La- LaLa-La LaLa-LaLa La-LaLa
La La-La La-LaLa
時折咳き込む音に紛れて地下に響く歌。歌詞は無いがその響きが金属製の通気口を通じて様々な場所で聞こえる。規則的なソプラノボイスは人が歌うにはあまりに抑揚が無い。
淡々と綴られる音が私達の耳に入る。誰がどこで歌っているかは全く分からないが、それでも人々は耳を傾けた。
地下シェルターにこだまするのは浄化フィルターの低く重苦しい音、地下を掘削する機械音、人のうめき声しかない。だから意味は分からないが、少女の可憐な歌声は人の耳に残りやすく、荒んだ心を安心させる。
La- LaLaLaLa La LaLa-La La
LaLa LaLaLa
La-La La-La-La-
LaLa- LaLa La-LaLa
時折気管が締め付けられるような苦しげな音が聞こえる。または口から液体のような物が零れ落ちる音が聞こえる。地下に居る私達はこの音に聞き覚えがある。
「Butter」によって汚染され、正常に機能していない呼吸気管の音だ。いくら浄化フィルターで濾過しようが「Butter」は少しずつシェルターを汚染している。場所によっては外界と変わらない程度にまで汚染されている区域もあるだろう。そして少女は間もなく死ぬ。彼女が誰かは分からないがそれだけは直感で理解していた。
いや、直感では無い。上層に暮らす貧しい私達は既に見てきているのだ。「Butter」に体内を汚染され、衰弱して死ぬ人を。何人も何十人も何百人も。そしてそれはどうにもならないと言うことを。
LaLa
LaLa-La- LaLa LaLa-LaLa LaLa-LaLa
LaLaLa La-La-La- La-La-La- La-La
La-LaLa LaLa La
歌が聞こえる頻度はだいぶ少なくなって来た。また、聞こえる時も声は弱々しく、前のように透き通ったものではない。まるで喉に砂利を詰めて吐き出させているかのように耳障りでしゃがれた声になっていた。息吸う音はどこか引っかかる感じがして、聞くに耐えない音となった。それでも人々は排気口に耳を傾け聞き続けた。少女の終わりを。
LaLaLa La-La-La-
LaLa
La-La-La LaLa LaLaLaLa- La
La- La-La-La-
La-LaLa-La- La-La-La- LaLaLa-
もはや曲なのか息遣いなのかすら分からない。音になっていないその呼吸はもう、終わりを間もなく告げるだろう。そして少女は苦しみから開放されるのだった。
ある人はこれに涙し、またある人は彼女に自分を重ね絶望し、さらにある人はこの音を真似て新たなる彼女になろうとしたのだった。
LaLaLaLa La-La-La- LaLa-La-La La.
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