Ending story
日々ひなた
Introduce
Ending is start
全てのものには必ず始まりと終わりがある。誰でも知っている当たり前の事だ。使ったら無くなるし形あるものもいつかは壊れる。子供でも分かる一般常識なんだと思っていたよ。これを覆せるとしたら神様位じゃないかな。まあ覆る事は無いんだけど。
これが厄介な事に勘違いしたバカ共がたくさんいたんだ。何でも出来ると勘違いた自称「神」という無能達が。
その害悪な奴らは調和という言葉なんて知らない。自分に屈服しないものを全て支配し、自分の存在が絶対であると誇示した。そう考えると先にあるのは戦争だ。くだらないが優劣を付けなければ平和になれないとは皮肉なものだよ。
その結果は最悪という言葉ですら生温い。冗談や誇張ではなく地球は「壊滅」した。自分達で取り決めた危険な兵器の使用制限すら無視してNBCを撃ちまくったり、あるいは衛星軌道上から無差別破壊を行ったりとやりたい放題。次第に環境が浄化出来る限界を超えて汚染は急激に広がった。
中でも特に害悪な汚染源は「Butter」と呼ばれるようになった。それは生物兵器の形成したバイオフィルムに化学物質やら放射性物質が濃縮されたゼリー状の物質の総称だ。乾燥した部分は微小の粒子となり空気中を浮遊し、雨などによってゼリー状に戻ると近くの土壌や物体に速やかに吸着される。そうして触れた物質を様々な方法で汚染し、生物であれば死をもたらす。自分達で自分達の首えを絞める蛮行だ。
とうとう自称神様達は汚れた地球を見捨てて宇宙に逃げようとしたけれど、既に地球周辺の宇宙空間は無数のスペースデブリで覆われていた。自業自得と言うべきか、多くの蛮神は宇宙のゴミへと成り代わった。そんな神達が最後に見たのは真っ黒な海と赤茶けた大地だったと思う。
まあ、そんな神様の話はどうでもいいとして、問題は何の変哲もない民だ。金のある富豪は自分達だけ逃げようとして各地に地下シェルターを作った。汚染の届かない場所までただひたすら深く逃げた。あるいは巨大な塔を建設し、汚染された曇より高い所へ逃げた。あるいは漂う船に乗り込み、汚染が無くなるまで逃げようとした。金の無い一般人は?
もちろん殆ど死んだ。
弱者は当たり前だが死ぬ。何も驚く事はない。あるものは地雷や不発弾を踏み抜き、あるものは栄養失調で、あるものは汚染された水で、あるものは「Butter」に汚染され、あるものは生きる事に絶望して死んだ。
どれくらい死んだかはわからない。政府やら国なんてものは既に機能しちゃいないから統計もデータも残っちゃいない。ただ生きるために必死だった人に余裕なんて無いんだ。そんな死に損ないが生きる為には金持ち達の破棄した古いシェルターを改造してほっそり生き延びるか、汚染が少ない場所に身を寄せるしか無かった。
まあ、だからと言って多くの人間が逃げられた訳じゃない。今生きている人間は全盛期の1/100以下と言われている。なぜなら食料も資材も何もかも全く足りなかったからだ。そして地上の汚染は回復する術が無い程度まで悪化していた。つまり俺達に希望なんてない。あとは滅びを待つだけなんだ。
まあ、それが確定したからといって今生きている人間がすぐに死ぬ訳でも滅びる訳でも無い。必死に足掻きまくって絶望の果てに死ぬ。そしてまた少し生まれ、絶望して死ぬ。
で、俺はもうすぐ終わる死の中の人が生きる様に興味があるから、こうやって惨めな生活をしてる。俺は割と浅い階層に住んでるから「Butter」に結構汚染されて先は長くない。
でも、だからこそこの地下シェルター群「Agartha」で生きる人の記録を、死ぬ人間の目線で残していく。
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