03. 同性愛と優生学
その王国の人間は同性愛の遺伝子を持っていた。
それは優性遺伝であったため、その遺伝子の保有者は必ず同性愛的指向を発現した。すなわち同性愛者の子供は必ず同性愛者であった。
だが国王は同性愛を固く禁じ、そのような素養を持つ者は死刑として処分するよう定めていた。同性愛者たちはその胸の内を晒す事なく生きていた。望まぬ縁談も、子孫を残すための行為も甘んじて受け入れた。
一方で、その国の人々は同性愛者を受け入れていた。同性愛的指向を持つ人々は男女間の争いで中立な立場を保つ事ができた。そういった事例をはじめとして仲介者としての素養を発揮し、人々の緩衝役となり様々な不和を解消していた。同性愛的遺伝子の保有者は、この国の人々にとって重要な存在だった。
しかしある日、同性愛者達が決起した。彼らにとって、望まぬ縁談も子孫を残すための行為ももはや我慢の限界であり、そんな強要を打破すべく革命を起こした。国民達も同性愛者達に好意的であったので、その革命を支持した。
彼らの革命は成功裏に終わった。異性愛を絶対とする王は倒れ、あらゆる性的指向に寛容な人格者が新たな王に据えられた。同性愛者達は子孫を残す事を強いられる事が無くなった反動なのか、一切の生殖行為を行わなかった。
そして彼らの次の世代には、同性愛者は一人も生まれなかった。
その王国の人間は同性愛の遺伝子を持っていた。
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