第4話 爆乳少女、全裸で現る。

 現在の季節は夏(と言ってもこの国は常夏ではあるが)。彼女は休みなく歩いていたせいで、全身汗だくになってしまっていた。

「パンツの中が蒸れる……」

 いくら布が少なくてもこれだけ暑ければそういうことにはなる。彼女はできることなら水浴びでもしたいと思い、近くに川や湖でもないか探し回った。

「お、あったあった」

 すると、実に都合の良いことに彼女は湖を見つけることができた。彼女は早速辺りを見渡し、近くに誰かいないかを確認する。いくら婦女暴行を働ければ「去勢」させられてしまうとはいえ、法律を守らないイかれた輩は少なからずいる。男の時なら抵抗することもできたが、今のイツキは女の子である。理性を失った男に襲われたらひとたまりもない。

「誰もいないっと」

 周りに誰もいないことを確認したイツキはスルスルっとマイクロビキニと巫女装束を外した。はっきり言って彼女が暑さを感じる一番の原因が巫女装束なのだが、彼女はそれを頑なに外そうとはしなかった。こんなコスプレ衣装でも、少しでも肌を隠せるなら着けていた方がマシだと思っているのだろう。

 彼女は服を全て脱ぎ捨て、一応大事なところが見えないよう、右手で胸を隠し、左手でアソコを抑えながら湖に浸かった。

「冷たくて気持ちぃ!」

 彼女は久しぶりの爽快感に思わず声を上げた。するとその時、何かの物音が付近の草むらから聞こえてきた。彼女は咄嗟に湖の中に潜った。

(誰かいる!? 確かに確認したはずなのに……)

 彼女は水の中でこの後どうすべきか考えていたが、しばらくして水の上の様子に特に何も変化がないことに気がついた。

(あれ、もしかして気のせいだった? それとも、隠れたフリをして出てきた瞬間を襲うつもりなんじゃ……?)

 彼女の疑念は尽きなかったが、これ以上は息が持たず、彼女はやむなく一度水面に顔を出すことにした。

「ぷはっ……あれ、誰もいない?」

 極力陸から遠いところで顔を出した彼女の目は、特に人の影を捉えることはなかったのだ。

「気のせいだったのかなぁ……。でも結構大きい音が聞こえたような気も……」

 彼女は物音の正体を確かめるべく付近の探索を始めた。

 転生前、趣味のアニメやネットサーフィンの影響で彼女の視力はそれなりに悪くなっていたのだが、今はかなり遠くまで見通せるほどに視力は回復していた。恐らく数値で表せば、「2.0」どころではおさまらない数値になっているはずだ。

 しかもそれだけでなく、今の彼女は転生前よりもあらゆる能力に向上が見られていた。営業マンとしての鷹野伊月は口は立つが、運動に関してはからっきしだった。

 しかしそれが今はどうだろう。今の彼女はこれだけの長い距離を歩いても息一つ上がらず、湖をスイスイと泳げるまでになっていた。初めこそ慣れない女性の身体に戸惑っていたが、明らかに向上した身体能力を感じ、最近では、彼女はこの身体も悪くはないと思えるようになっていたのである。

 さて、話は逸れたが、彼女は相変わらず物音の正体を探すべく行動していた。そしてついにその正体を見つけ出した。

「あの草むらに誰かいる……」

 彼女はすぐに逃げられるよう、しっかり衣服をまとい、その草むらへと近づく。そして草むらの人影に向かってこう言った。

「おい! 隠れて人の裸見てただろ!?」

 イツキは思わず声を荒げると、草むらの奥の人影がビクッと揺れた。それを見て、イツキはここぞとばかりに強行策に出た。

「隠れてないで、出てこい!」

「きゃあああ!」

 イツキが突撃すると、明らかに女性のものと思しき声が辺りに鳴り響いた。そして次の瞬間、ドボンと水にその人物が落ちる音が彼女の耳に飛び込んできた。そして彼女の目線の先では、なんと裸の女の子が湖で溺れていたのである。

「た、助けて! わ、わたし、泳げな……!?」

「た、大変だ!? ちょ、ちょっと落ち着いて! 今助けるから!」

 すかさず湖に飛び込むイツキ。溺れる少女の元に近づくも、少女は底に足が付かないのか、バタバタともがく一方だった。

(こんな時に考えることじゃないけどこの子のおっぱいでかっ!? 俺よりもかなり大きいよ!)

 その子の胸のサイズはイツキのそれを軽々凌駕していた。しかも、少女は一切の衣服を着ておらず、爆乳が完全に露わになってしまっていたのだ。いくら女の身体を手に入れて一ヶ月以上経つとはいえども、彼女は二十年以上男だったのだ。そんな簡単に男の性癖を捨てられるわけもなく、今の彼女にとってあられもない少女の姿はいささか刺激が強すぎた。

「ま、まずい、変なところが勃ってきて……って、今そんなことやってる場合じゃない!」

 イツキは無理やり自身を落ち着け、暴れる少女を抱きしめた。

「落ち着いて! もう大丈夫だから!」

 イツキがギュッと少女を抱きしめると、はじめこそ暴れていた彼女も、安心したのか徐々にイツキに身を委ねるようになった。爆乳全裸少女を背負って岸まで行き、イツキは彼女を地面に横たえた。

(このままじゃ俺の意識がもたない……)

 イツキは丸出しの少女の恥部に巫女装束をかけて隠してやった。

 ところで、イツキが少女の顔を改めて見てみると、実に可愛らしい顔をしていることに気付いた。シルバーの長いストレートヘアに、色白の肌、そしてグラマラスな身体に似合わない童顔はギャップがあり、その少女の魅力を存分に引き立てていた。また、くっきりとした大きな目は少しタレ気味で、柔和な印象を受けたのだった。

 イツキはこれほどまでに可愛い女の子を自分以外では見たことがなかった。

 しばらくして少女の呼吸が落ち着いてきたので、頃合いを見てイツキが尋ねた。

「落ち着いた?」

「は、はい。なんとか」

「どうして裸で隠れてたのさ?」

「ちょ、ちょっと事情がありまして……」

 何やら挙動不審の少女。外で全裸でいることにいったいどんな理由があると言うのだろうか?

「じ、事情って何? あり得ないとは思うけど、もしかして、服も買えないくらい貧乏だとか?」

「え……そ、そうです! そのまさかです!」

「今明らかに考えなかった……?」

「そんなことないです! お、お金がなくて服が買いに行けないのは本当ですし!」

 何やら引っ掛かりのある言い方に首を傾げるイツキ。

「でも、お金ないっていっても服なんてピンキリじゃない? 粗悪品でもつけないよりはマシだと思うけど」

「そ、それが、わたしの胸に合うサイズは普通のお店には置いてないんです……。おーだーめいどが出来るほどお金は持ってなくて……」

「あー、なるほど……」

 彼女の胸のサイズはイツキのサイズ(Fカップ)なんてとうに超えているように思われた。確かにこの大きさでは普通の店では買えないかもしれない。

「でも、下まで履いてないのはおかしくない?」

「じ、実は、水浴びをしている間に、上下とも盗まれてしまって……」

「あー、なんか色々辛かったね……」

 思わずイツキは項垂れる少女の頭をよしよしと撫でてやった。何やら怪しい部分は多分にあるが、この落ち込みようは嘘ではないとイツキは思ったのである。

「うー、優しいんですねぇ、えっと……」

「イツキだよ。あなたの名前は?」

「イツキさんですか、良いお名前ですね。わたしは……サラです」

 少女は一度辺りを見回した後、イツキにそう答えた。

「またなんか間がなかった……?」

「き、気のせいです! とにかく、よろしくお願いします」

 こうしてイツキは爆乳少女サラと出会ったのだった。

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