第2話
時を同じくして、野村萬斎に姪ができています。それを皮切りに、結婚というものに拍車が、かかったことも事実としてあります。
「子は宝。」
それは、ある種、現実として、あるわけなのですが、それはそれで、苦労が絶えないのです。政宗改め野村萬斎は、当時の記憶を手繰り寄せました。そして、それから数えて、5年後の未来について、考えはじめました。東京オリンピックが開催される、5年後について。
「和のテイストを出すか。それとも世界を驚かせる演出をするか。」
全ては、彼の手腕に架かって居ます。幸い、日本には、世界で活躍するアーティストが居ます。津軽三味線、日本舞踊、和太鼓。古来から伝わる伝統芸能が、世界に発信されているます。今、敢えて、それをおもてなしとするのか、世界照準に合わせたエンターテインメントを発信するか、悩みどころでした。
「大相撲だ。」
そう思いました。日本の国技でありながら、オリンピック競技に唯一、選ばれなかったスポーツ。古来、ペリー来航の年、時の征夷大将軍、徳川慶喜が帰りの黒船を、力士の四股で見送り、ペリーを驚かせたという歴史があります。
日本の力士が、列を成し、雲竜型をします。能面を被った能楽師が、ゆっくりゆっくりと聖火に蝋燭を灯します。すると、大きな聖火が、塊となって、光を放ちます。尺八が、夜の音から、朝の音に変わり、夜明けを現します。そうして、各国の選手団が、津軽三味線、和太鼓と共に、入場します。平和の祭典として、日本には、まだ和の心が、残っています。そして、おもてなしという心も。
「もし、仮に海外の人が、この開幕式を観た時に、我々にも和の心が残っているのだ。」
という印象を残すのに、丁度いい。そう思いました。
最後に、天皇が祝辞を読まれ、日本には、まだエンペラーがおわす、と印象づけます。
「できた。」
野村萬斎は、頷きました。
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