第2話 始まりはきっと………

「………おい!!!なんだよこりゃ!」


 一人の男子生徒の声が聞こえた俺は目を覚ました。周りを見渡すと皆同じ方向を見て固まっていた。

 俺も同じように皆が向いてる方を見る。そして俺もまたそのまま固まってしまった。


「何だよ!?これは………」


 俺も同じ感想だ。いつも南校舎の二階から見える光景は住宅街が見え、その奥にはビル街が見えるはずだった。

 しかし、今見える光景は………学校を優に越える高さの木々が生い茂っていた。


「……いや、何でこんなことになってるんだよ?」


 驚きと動揺が一緒に押し寄せてもう何がなんだかわからなくなってきた。

 ここは何処だよ?さっきまで外は家とかが見えて少し眩しい位の日光が照らしていたはずだったよな。


「ね、ねぇ?あれ何?」


 女子の集団がかたまりながら何かを指差していた。

 それを俺も除き見るとそこには………人の二倍近くあるトカゲのようなものが一階の教室に侵入しようとしていた。


「嫌ァァァァァァァァ!!!!」


 その瞬間デカイ悲鳴と共に一人の女子生徒が勢いよく教室に入ってきた。

 その女子生徒は血塗れで顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。


「た、助けて!!!あいつらが、あの大きいトカゲが」


 女子の声はそこで止まった。

 いや、止まったんじゃない。止められたんだ。

………何に?そんなの決まってる。


「い、嫌ァァァァァァァァ!!」


 先程までそこにいた女子は頭だけがなくなっていた。そう、女子生徒は後ろにいたトカゲのように生物に頭を食いちぎられた。


「…んだよ。なんなんだよぉぉぉぉ!」


 その声と同時に教室にいた俺以外の生徒が一斉に走り出してトカゲが入ってきた反対のドアから出ようとした。


「……いや、そっちから出ちゃダメだろ。」


 俺はドアの方ではなく、ベランダの方に走り出した。

 普通考えて、いや、もうこの状況事態普通じゃないんだけど、それでも既にこのトカゲが二階に来てる時点で反対のドアから逃げたら絶対にあいつらにエンカウントするだろうな。


「ちょっと、西方!何でそっちから逃げるのよ!」


 俺がベランダを出た瞬間後ろから詩音が追いかけて来た。


「待ってよ、西方!わ、私も一緒にいく!」


「お前は他のやつらと一緒に行った方……が!」


 言葉を言い終わる前に俺は詩音を抱き締めて隣の教室に窓を割り飛び込んだ。


「ッタ!な、何でいきなり!」


「後ろ見ろよ、あぶねぇだろうが!」


 詩音は先程までいた場所を振り向いた。


「……え?」


 そこにはトカゲのように生物が教室の窓をぶち破り入ってきていた。


「……おい、詩音」


「な、何?」


 どうやら、このトカゲは俺達に狙いつけてんな。もし、俺たち以外も狙うって言うならさっきの時点で俺たちじゃなくドアの方から出てったやつらを狙うはずだ。

 なら、こいつは……。


「あいつは俺が引き付けるだから今から言うもの取ってきてくれ。」


「そ、そんなの無理だよ!に、逃げよ?一緒にさ!だ、大丈夫だから、私が守ってあげるからさ!だから」


「黙っていけよ!お前がいるのが邪魔なんだよ!だから、これ!」


 そう言って俺は近くに落ちていたノートを破りすぐに必要なものを書いて詩音に無理矢理渡した。


「いいか!これを持って、北校舎の一階溶接室に来い!」


 そう言って俺はトカゲの方に走りギリギリのところを通ってまたベランダに出てすぐに壊れた窓の破片を持ってトカゲの方に投げつけ注意を引きける。


「おい、トカゲ!こっちだよ!」


 大声でトカゲを呼ぶと、トカゲは俺の方に向かって歩き出した。

 来た、これでこいつを連れて溶接室に行けばこいつを………殺せる。


「ウググルルルルぅぅぅぅぅ!!」


 変な声をあげていきなりトカゲは叫び出した。

 なんだ?こいつ、いきなり叫び出してまるで、雄叫びのよう……に?


「て、こいつまさか!」


 その瞬間走っていたはずのベランダが崩れ落ちた。その下には先程とは違うトカゲが待ち構えていた。

 クッそ!よりにもよって、コイツら!群れるタイプの生物かよ!しかも二階からのダイブした後に全力疾走出きる訳がない。



「死ッヌ!」


 落ちた瞬間、俺は着地に失敗して背中を勢いよく叩きつけてしまった。

 ッテなぁ!いや……これでも良かった方だな。普通なら、足折ってたりするしな。


「しかも、これなら一階に下りる手間が省けた。……て、言いたいけど」


 背中が痛いのを我慢してすぐに立ち上がり後ろにいたトカゲの方を向いた。


「ウググルルルぅぅぅぅぅ!」


「ですね!」


 俺はすぐに振り返り南校舎の裏口から再度校舎に入り廊下を全力疾走でかけ抜ける。

 目の前はどこを見てもやはりと言って地獄絵図だった。


「ハァ、ハァ、ッチ!」


 血が廊下を多い尽くしそこらじゅうに体の一部だったであろう肉の塊が落ちていた。

しかも悪臭のせいで吐き気がするが俺は息をのみかけ抜ける。


「つ、ついたか。」


 南校舎の一階渡り廊下を疾走して北校舎の一階、溶接室についた。


「て、そう言えばあのトカゲはどこに言ったんだ?」


 振り返り周りを見渡しても先程まで追いかけてきていたトカゲは姿が見えなくなっていた。


「まぁ、いい。どうせあのトカゲの事だ。すぐに」


「千鳥、これ持ってきた。」


 溶接室に入った瞬間後ろから詩音がとあるものをもってこちらの方に走ってきた。


「お前……生きてたのか?」


「ちょっと!あんたが持ってこいって言ったんでしょ!しかも何で死んだことにされてんのよ!」


「で?早くそれ渡せよ。」


 詩音が持ってきた物を受け取った後に溶接室に入りその部屋の中にあるボンベの前で立ち止まる。


「ね、ねぇ?まさかだけど、これ使うんじゃないでしょうね?」


「あ?使うに決まってんだろ?」


 そこには2つのボンベがあり、ボンベにはペンキのようなものでアセチレンと酸素と書いてあった。


「よし、これを開けてッと。」


 2つのボンベを開けて中身をこの部屋に充満させる。

 と、その瞬間に入ってきたドアが壊されて二匹のトカゲが入ってきた。


「は、は、丁度良いタイミングだな。詩音、すぐに窓から外に出ろ!」


 さて、ここまでで来たら何がしたいかわかったよな?そう、俺は


「ハゼロよ、トカゲ野郎。」


 ガスが充満した部屋に俺は詩音に頼んで持ってこさせた……ガスバーナーに火をつけて部屋のなかに投げ込んだ……その瞬間に爆音と共に部屋の中は火の海とかした。


「おい、詩音さっさと立てまだ他にもあのトカゲがいるんだから走るぞ。」


 詩音の手を取り無理矢理立たせて学校の裏門に向かって走り始める。


「ね、ねぇ、これからどうするの?」


「……まず近くの茂みに隠れる。」


「え!?そんな事したらあの化け物に見つかってまた襲われるんじゃないの?」


 かもしれない。けど、だからってこのままやたら無闇に逃げたって死ぬだけだ。


「いいから、少しの間だけ茂みに隠れるぞ!」


 急いで学校の裏門からでて木々の後ろに体を隠すように回り込んだ。

 さて、ここまではいい。だけど……これからが一番の問題だ。



「……ねぇ、これからどうするの?私達どうなるのかな。」


 詩音はそっと俺の制服の裾を握りその手は小刻みに震えていた。

 それはそうだ。俺達は普通の高校生、こんな状況で怯えない方がおかしい。


「……正直俺にもどうすれば良いかわからない。」


「ごめん、そうだよね。……そうなんだけど!これからが怖いよ、とっても!いつ殺されるかわからない。もしかしたら千鳥の方が先に死んじゃうかもしれない。」


 涙目になりこちらを詩音は見つめてくる。


「……私嫌だよ、千鳥が何か先に死んじゃいそうで!」


 詩音はそのまま俺に抱きつき嗚咽をつきながら声を殺し涙を流していた。

 俺はそれを見ながらそっと詩音の頭を泣き止むまで撫でていた。

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