第6章 障害
第6話―障害―(1)
僕が望んだのがいけなかったのか。
また、過度に期待してしまったのか…。
光さんは、ただ謝るばかりだった。僕の問いは、宙に浮いているままだ。
けれど、だからこそ…この理解の相互を超える何かが欲しい。
これも、あの日の出来事も…。
ただの勘違いであるなら、今すぐそれを正して欲しい。
そうじゃ無いにしても、納得出来るだけの理由が欲しい。
そうじゃないと…。
僕は…また…。
自問自答を繰り返し、僕は自分で自分を傷つける。
駄目だ…。もう、聞きたくない。
「じゃあ…モデルはどうするんですか?」
「それも、ごめん…。もう…会えない…。」
「そんな…。」
「ごめん…。」
分かっている。悪いのは僕だ。
僕は、自分で自分にとどめを刺した。
「でも、この絵は必ず完成させる…。本当に…全部…ごめん…。」
初めから、世界が違う事は分かっていたじゃないか。
それなのに、僕は何故…。
彼の世界の、一番近くにいたいだなんて思ってしまったのだろう…。
「分かりました…。」
声がしぼんでいくのが分かった。
「もう…いいです…。」
もう、無理だ…。
でもこれ以上、光さんに謝って欲しくなかった。
僕は、アトリエを飛び出した。息が苦しい。呼吸が噎せ返っている。
喉が締め付けられる感覚が取れない。
それでようやく、僕は泣いていたのだと分かった。
アトリエにいた時からだったのか…。外に飛び出た時なのか…。
もう何もかも分からない。あの人の事も…。
今までも、分からない事は沢山あった。ずっと、そうだった。
でも、今回は完全に分からなくなってしまった。
ぷっつりと、千切れた糸のように。辿る事も戻る事も出来なくなってしまったのだ。
分かった事は一つだけ。
光さんは、ただ僕をからかっていただけ。
僕が、あまりにも色んな事に幼稚で、未熟だったから…。
きっと、面白がっていただけかもしれない。
それとも、可哀想と思ったのかもしれない。
どっちにしろ、僕は最初から馬鹿にされていたのだ。
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