補習

補習1 聖夜の悪戯(モノのインターネットとセキュリティ)

 ハヤトが目覚めると、そこは、教室だった。

 周りを見回すと自分以外は誰もいない……


 いや、いた!

 仮面舞踏会な眼鏡をかけた白衣の女性が教壇に!!


ハヤト「こ、ここは……?」


謎の女性「目が覚めたようね、では始めようかしら」


ハヤト「始めるって、何をです?というか貴方は誰ですか?」


謎の女性X「『聖夜の悪戯』の時点では、未登場だから、今のところは謎の女性Xとでも名乗っておこうかしら。これから始めるのはね……フフフ、補習よ!!!」


ハヤト「補習?」


謎の女性X「ありていに言えば、各話の内容に絡めて、2018年あたりのセキュリティなトピックを解説する感じね。」


ハヤト「本編がセキュリティっぽくないからですかね?趣旨はわかりましたけど、何で俺なんです?」


謎の女性X「さあ、多少痛めつけても大丈夫そうだから、とか?」


ハヤト「(嫌な予感しかしない……)」


謎の女性X「前置き長くなっちゃったわね。では今度こそ。『聖夜の悪戯』では、十数年前のクリスマスの悲劇について語られたわけだけど、メイドロイドを始め、AIで稼働していたインフラ関係が暴走して大惨事になってしまったのよね」


ハヤト「後で補足されていますけど、コンピュータウイルスによって発生したとか。でも、実際そんなことって現実に起こりうるんですか?」


謎の女性X「そうね、メイドロイドはまだ発明されていないからなんとも言えないけど、暴走という観点で言えば、パソコンを暴走させるコンピュータウイルスは1980年代からあるわ(Cascade等)。私もアナタも生まれてないわね。あと、ウイルスとはちょっと違うけど、ハヤト君、エッチなサイトを見たときに、ウェブブラウザの新規ウィンドウが延々と開き続けるとか味わったことあるんじゃないの?」


ハヤト「な、な、無いですよ!何言ってるんですか(これが俺な理由か、言葉責めとは……)。でも……そうか、パソコンだけならそんなに怖くないですね、パソコン使うのを気を付けてれば、いいわけですから、そ、その、変なサイトを見ないようにとか、ウイルススキャンソフトで監視するとか。」


謎の女性X「胡麻化したわね。確かに、パソコンについては、使用者が、変なソフトをインストールしない、サイトのリンクをむやみにクリックしないという風に使い方に気を付けたり、OS(オペレーティングシステム、パソコンの基幹システム)のパッチやソフトウェアで防ぐことはある程度可能だわ……でもね、最近は、ウイルスが感染する可能性があるのは、パソコンだけじゃないのよ」


ハヤト「パソコンだけじゃない?」


謎の女性X「モノのインターネット(Internet of Things)って聞いたことないかしら?」


ハヤト「パソコン以外の様々なモノがネットワークにつながるってやつですよね?話しかけるだけで通販の注文ができるとかいうあの人工知能スピーカーとか、いわゆるスマートデバイスな」


謎の女性X「意外に勉強してるのね。なんだか悔しいけれど、そのとおり。様々なデバイスがネットワークに繋がること、それにより、人の生活が便利になるかんじね。スピーカー以外にも車とか、時計とか、歯ブラシとか、そのうち家の中にあるもの全部つながっちゃうんじゃない?くらいに対応するデバイスは増えているわ」


ハヤト「……この流れだと、『だからパソコン以外も注意が必要なのよ!』とかになりそうですが、スピーカーとかがウイルスに感染することってあるんですか?」


謎の女性X「スピーカーはまだみたいだけど、スマートデバイスだと、ネットワークカメラにマルウェア(Mirai)が感染した事例が2016年頃にあるわ。そのうえ、感染したデバイスは、クラッカーによって特定のサイトを攻撃するのに使われちゃってね……大惨事」


ハヤト「大惨事って、それじゃあクリスマスの悲劇じゃないですか!!」


謎の女性X「流石主人公、言ってほしいところで言ってほしい台詞を言う。スマートデバイスは、制御のためにLinux等のOSで稼働していることが多いから、ウイルスに感染してしまうことはあり得るのよ。ウイルスとマルウェアは今のところはとりあえず同じものだと考えておいてね。だからそのうち、メイドロイドが発明されたら、ネットワークにつながる以上、ウイルス感染の危険はある。オーケー?」


ハヤト「オーケー……ですけど、それってなんとかして防げないんですか?悲劇はもう起きちゃってるから仕方ないけど……」


謎の女性X「使う側の対策としては、1つはネットワークと通信させないことね。」


ハヤト「でも、ネットワークにつながないと、スマートデバイスの意味無くないですか?」


謎の女性X「そうね、常に繋がっていないと困るものは仕方ないわ。そうでないものはなるべくネットワークに繋がなくてもいいのなら、回線を切っておくという感じね。そして、2つめは、スマートデバイスにアクセスするパスワードを変更しておくことね。」


ハヤト「パスワードなんてあるんですか?」


謎の女性X「問題外!普通は設定にしたり、ネットワークにアクセスしたりするのに絶対あるから、デバイスの説明書で確認すること。初期パスワードは共通だったりするから、そのままにしておくとやりたい放題されちゃうわよ。」


ハヤト「はい、反省します……」


謎の女性X「あとは、スマートデバイスのOSやソフトウェアのアップデートをすること。OSやソフトウェア自体が、ウイルスが利用する穴、いわゆる脆弱性を対策していれば、感染することがなかったりもするわけだから。このあたりは、スマートデバイスの開発元やOS開発者さんにも頑張ってもらう必要があるけれど」


ハヤト「(メイドロイドのソフトウェアのアップデートが必要か……)」


謎の女性X「エッチな機能は付かないわよ、ハヤト君」


ハヤト「ぎくっ……というわけで、先生と2人で頑張っていこうと思いますので、皆様よろしくお願いいたします!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る