現実は小説よりも奇なり
「じゃあ、早速。サクラ、こっちだ」
「???」
サクラは、口いっぱいにクッキーをほうばりながらも、クッキーの最後の1枚に手を伸ばしていた。
ハヤトはため息をつくと、その首根っこをつかんで、そのまま運んでいった。
「ここに座って」
リビングから2室隔てた先にある部屋の中、奥のスクリーンの手前にあるシートにハヤトはサクラを座らせた。
GENEの
「では
「自分で言っておきながらなんだけど、ドキドキするなあ」
「姉さん……」
GENEの
通常ほぼ一瞬で終わるのだが、何やら時間がかかっているようだ。なかなか
ハヤトもタマコも固唾を飲んで見守った……が、その甲斐は無く、しばらくたってから時間切れになり、
「
「え……」
「残念だけど、わからず、ね。まあ、サクラはイクイップドじゃないかもしれないし想定通りといえば想定通りなんだけどね」
「やっぱり、連れて行くの?」
「行き先が警察か役所かは難しいところだけど、この子の
そうなのだ、
そういう意味では、タマコの意見はとても正しく、サクラのことをとても思いやったものではある。
しかし、ハヤトは、映像で見た祖父の台詞を思い出すのだ、『サクラのことを守ってやってくれ』と祖父は言っていた。
重ねて、祖父も身の危険を感じていたという、警察や役所は確かに公的な機関ではあるけれど、みんながみんな味方だと考えてよいのだろうか?
「お兄ちゃん?お姉ちゃん?どうしたの?」
2人とも難しい顔をして押し黙ってしまったせいか、サクラがシートに座ったまま、心配そうに2人の方を見ていた。
「サクラ……ほら、目の前にUNKNOWNてエラーになってるだろ。あそこは本当は、サクラの名前が出るはずなんだよ。それで、悩んでるんだ」
どうにも上手く説明ができず、自分でも意味不明な、しどろもどろの事実についての説明だけになってしまった。
「あそこにサクラのお名前が出ればいいの?」
「そりゃあ、『秋津サクラ』って出れば問題ないけど」
「わかった」
「えっ?」
サクラは目を閉じると、手を前につきだした。
気のせいかサクラの手が薄ぼんやりと光っているように見える。
それとともにスクリーンからUNKNOWNの文字が消え、全体的に点滅しはじめた。ハヤトはその不思議な光景を、目を何度かこすりつつ、ただ見ていることしかできなかった。
「通信解析……パスコード解析……接続完了……」
サクラの口から淀みなく、次々と言葉が発せられる。今日初めて接しただけではあるが、「サクラじゃないみたいだ」とハヤトは思った。
「……プロテクト解除……情報追加完了……ロギングクリアー……認証リスタート……」
サクラが無言になった。
同時に、スクリーンは点滅しなくなり、代わりに
それから、すっと、一瞬スクリーンが消えると、WELCOMEの文字とともに、
そして、サクラは目をあけるとこう言うのだった。
「これでいい?お兄ちゃん?」
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