招かれざるモノ
ピンポーン。
「……あれ?」
玄関のチャイムの音で目が覚めた。
なんとはなしにあたりを見回す。
サクラが近くで、漫画の本を読んでいる。
「お兄ちゃん、誰かきたの?」
ピンポーン。
再度チャイムが鳴った。時計を見ると午後9時を回っている。
こんな時間に誰が?
とりあえず玄関のカメラの映像をスクリーンに回す。
直後ハヤトはのけぞった。
のけぞらざるを得なかった。
スクリーンに映し出されたのは、昼ショッピングモールで出くわした、あの黒服の集団だった。しかもあのときよりも人数が多いように見える。
「あれー、おかしいな、聞こえてないかな?中にいれてほしいんだけど」
カメラに向かって、接近すると遠慮無く言ってくる。ハヤトは少し悩んだがやけくそになって叫んだ。
「か、帰ってください!」
「そうだーかえれかえれー」
サクラも手に持った漫画を手放し、一緒になって帰れコール。
しかし、その反応は、相手に在宅であることを示しただけであった。
「ほー、お嬢ちゃんいるのか。都合がいい」
「だから帰れっていってるだろ!!」
「きついなあ、お兄ちゃん。そもそもお嬢ちゃんを優しく連れていこうとしたのに逃げちゃうから、ここまで俺たち来てあげたって言うのに」
「そうだそうだ」
ハヤトと会話しているリーダーらしい黒服の、隣の黒服が囃す。
「あんなバレバレの嘘でごまかされるわけないだろ!!」
ハヤトが一括すると、黒服達はざわざわし始めた。
「なんでばれたんだ」
「お前の言い方だろう?」
「いやいやあれは完璧だった」
収集がつかなそうなので、ハヤトは耐えきれず、説明する。
「会いたい人が寝たきりだっていうのに、街でサクラを見かけたって矛盾してるだろ!!!」
黒服達は一瞬きょとんとしたが、「あーそうか」「やっぱりお前の言い方だろう」「完璧を期しすぎてかえって失敗したか」とさらにざわざわを続ける。
それは、しびれをきらしたのか、リーダーらしき黒服が一喝するまで続いた。
「お前ら、いい加減にせんか!!!」
「すみません……」
やれやれと肩を落とすハヤトだったが、黒服リーダーは場を収めた後、ハヤトに向かって最後通告を発してきた。
「お兄ちゃんよ、おとなしく出てきてお嬢ちゃんの身柄を渡してくれるっていうなら、お前の身の安全は保証する。だが、このまま扉をあけてくれないなら、実力であけさせてもらうぞ。その後は、知ったこっちゃ無いからな」
ハヤトの家は、祖父の影響で旧式なところが多いが、扉は祖父が行方不明になった後に、タマコが付け替えさせて最新式になっている。
何よりもサクラを彼らに渡すという選択肢は彼にはない。
「やれるもんならやってみろよ」
「やってみろー」
黒服のリーダーは2人の言葉に肩をすくめると、入り口の扉のボタンを押した。こういうときは、ボタンから直接侵入者の手に電流が流れるはずだ。
ハヤトはそうするように黒服に言ったものの、逆に黒服が受けるであろうダメージを想像して少しハラハラしていた。しかし……。
プシュー、何事も起きず、扉は開いた。
「!?」
「ハハハ、驚いたか。我々フリーネットワークにとって、物理的にしろ論理的にしろセキュリティなんて意味ないのだよ」
「さすが兄貴」
「ボーッとしてるんじゃねえ、お前ら、ターゲットをふん縛ってこい!」
「は、はい、ただいま」
そのまま黒服達がなだれこんできた。
その光景をカメラで見ていたハヤトは、危機を察して家中の扉をロックし、サクラの手を引っ張ると侵入者とは逆側、すなわち家の裏口に走りに走った。
そして裏口の扉を開けたのだが……。
「!!」
「当然だよなあ、お兄ちゃん。考えていなかったのかい?」
そこにも数名の黒服、気がつくと前も後ろも囲まれていた。
中に籠城しても追い詰められるだけだと思って外に出たのだが、これはうかつだったとハヤトは後悔した。
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