俺たちは管理されてる その2
「でもな、まったく国のお偉いさんも面倒くさいことを考えたもんだって俺は思うよ」
「どういうこと?」
「委員長は成績いいから大丈夫かもしれないけど、俺たち情報工学系の高校生としては、就職にしろ、進学にしろ、
GENEのランク認定試験とは何か?
これを語るには、まずGENEについて説明せねばなるまい。
GENEとは、国家管理ネットワーク安全法で認められている、日本唯一のコンピュータシステム(オペレーションシステム)である。
つまり、日本国内で利用してよいコンピュータシステムはこのGENEだけであり、他のシステムを開発したり使ったりすると、警察のお世話になることになる。
余談ではあるが、その名前の由来は、General(一般的)、Entire(全体的)、National(国家的)、Eternal(永遠の)の頭文字から命名されている。今後、悲劇が起きないようにとの願いがこめられているそうだ。
それまでの類似のシステムに無いGENEの最大の特徴としては、システムを利用するための資格が国家により国民全員に直接個別付与されるということだ。
この資格のことを「
そして、コンピュータを利用して何ができるかはこの「
例えば、ネットワークを利用する対戦ゲームを遊ぶためには、Dランク(拡張操作権限)以上が必要となる、というイメージだ。
国民全員には生まれたときから必ずEランク(標準操作権限)が付与されるが、Dランク以上の取得は教育歴および国家試験という条件が課されている。
ちなみにハヤトが憂鬱になっているランク認定試験とは、情報工学を学ぶ高校生として卒業までに取得必須とされているCランク(設定管理権限)の国家試験のことである。
「でもさ、秋津、考えてみなよ。クリスマスの悲劇の前って、こういうランクによる、秩序っていうか、公的セキュリティ、っていうのかな?そういうのが無くてネットワークは無法地帯だったっていうじゃない。それって怖いことじゃない?」
「俺は自由で良い時代だったって思うけどなあ。大体、ゲームしたくてもDランクじゃないと出来ないとかって、おかしいと思うんだよ。最近はCランクじゃないと出来ないのもあるし。国家介入しすぎじゃない?ゲームくらい自由に遊ばせてくれよ!!」
「そういうあんたみたいなのが、ゲームと一緒にウイルスをインストールしちゃったりして悲劇が起きるからよ……ああ、ちょっと不謹慎かも、今言ったの無し」
「委員長、俺が言うのもなんだけど、真面目すぎるぞ」
「大きなお世話よ!……こういう性格なんだから仕方ないでしょ……」
「……」
「……何よ?!」
それまでの大きな態度が一転、ばつが悪いのか小さくなって口ごもる、彼女の教室ではあまり見せないそんな姿は、ハヤトにとっては意外なものだった。
そういえば、さっきから普通に委員長と話せてる、会話が弾んでいる、そんな自分も意外、の意外づくしだった。
「さて、っとこれで終わりね」
この学校は、ゴミ置き場にゴミを置いておけば、あとは係の職員が始末してくれるようになっている。2人ともばらけすぎず、つめすぎずと考えながら手持ちのゴミ袋をそこに置いた。
「じゃあもういいわよ」
「本当にいいのか?……何だか申し訳ない」
「約束だしね。それに妹さん待たせてるんでしょ。早く行ってあげて」
「ありがとう委員長。そして日直忘れてて本当にすまなかった」
ハヤトは心から頭を下げた。
「私も弟が……そういうのわかるから……」
「そしていつもミコトと裏で真面目女、略してマジョとか言ってて本当に申し訳ない……」
「ちょっとまった、そんなこと言ってるの!あ、廊下は走らない!こらーーーー」
はやる委員長をその場に残して、ハヤトはにやりとしながら、走り去った。
なんというか、その場の委員長との良い雰囲気が耐えられなかったのだった。
ミコトに言わせると損な性格、ということになるのだろうか?
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