人間関係も大事
「さて、ハヤトよ、今日はどうする?」
今日の授業は、先ほどの歴史の授業で終わりである。
とくに部活動もしていないミコトとハヤトは放課後一緒に過ごすことが多く、放課後の活動について相談するのは彼らの日課だった。
「ごめん、今日はこれからサクラと買い物なんだ」
「ああ、妹ちゃんか、しっかしお前のシスコンも度が過ぎてるよな。俺でも、少しでも近づくと怒るし……。ちょっとひどすぎるぞ」
「お前だから逆に警戒してるんだよ」
「そうかー。あーサクラちゃーん」
泣き言を言うふりはしているが、ミコトと付き合いの長いハヤトは、彼がいわゆる女子にモテる存在であるのを知っているので同情はしない。
一週間前にも隣のクラスの女子に告白されたが、付き合うのは面倒だと断ったという。女たらしと言うほどではないが、危険人物なのは間違いないのである。
「仕方ない……じゃあな。また今度サクラちゃんとお話させてくれ」
「ああ、また明日な。サクラについては期待しないで待っててくれ」
無念そうな顔をするミコトと挨拶をかわすと、ハヤトは足早に教室を出ようと扉に駆け寄ったが、スッとその前に立ち塞がる影があった。
「秋津、待ちなさいよ」
「ん?」
影の正体はクラス委員長の
彼女は、例えばミコトに言わせると「割とクラスの中では可愛いほうなんだけどな、性格が残念すぎるんだよな、何だあの真面目女、略してマジョは……」という評価の、品行方正の塊のほうな人間であり、ハヤトも彼女と話すのはあまり得意ではないのだった。
「な……何でしょうか?委員長サマ……」
「何でしょうかじゃないわよ。全く、その調子じゃすっかり忘れてるみたいね」
「と、いいますと……」
「今日あなた日直でしょ?」
委員長は教室前方のスクリーンを指さした。
見ると、確かに今日の日直として自分と委員長の名前がそこに表示されている。
「……」
「朝も私だけで教室の整理整頓したんだけど。最後の授業までには気づくかなって思ってたら、全然気づいたそぶりもないし!ねえ、聞いてるの?」
「はい……」
「ということで今から仕事するわよ」
マジョの剣幕に逆らえそうにない状況であったが、そんなハヤトの頭に、妹、サクラの顔が思い浮かんだ。
ハヤトは意を決して、最大限の勇気を振り絞った。
「あ、あの……」
「何?なんか文句あるの?!」
怖い……しかしここは頑張らねば、可愛い妹が待っているのだ。
「その……妹とこの後約束がありまして……」
「妹さん?」
マジョは意外そうな顔をした。
そして少し考え込むとあっさり続けてこう言った。
「仕方ない、これは貸しよ。次に返してね」
「そ、それでは……」
「でもゴミ捨てだけ一緒にやって、ちょっと量が多くてさ」
「はい……」
まあゴミ捨てだけならそんなに時間もかからないだろう。
ハヤトは、かばんを置くと、素直にマジョならぬ委員長に従い、くずかごから抜き出したゴミ袋を持つと彼女に続いて教室の外に出て、ゴミ置き場に向かって歩き出すのだった。
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