第21話
「この写真は一体なんですの?」
「どこかの洋館?」
写真部の人が取り出した写真には老朽の影響で壁がボロボロになり荒れ果てた地上から伸びたツタに絡まれている建物が写っている。
「今度ここで我が写真部が撮影会をする予定があってな。不審な人物が住んでいないか一通り回ってきて欲しいのだ」
「不審な人物?」
「我々は人の撮影には興味が無いからな。部費の為に仕方なく生徒を撮影する事はあるが基本的には人物の撮影はしていないのだ」
「言われてみれば風景の写真が多いですわね」
壁に貼ってある写真を見てみると半分くらいが誰も写ってなかったり人が見切れている風景がメインの写真ばかり飾ってある。
「あれっ? ちょっと待って――」
写真を見ると少しだけ違和感がある。
なんだか不自然な煙や光のような物が写っている写真が多いような。
「ねえ? この写真なんか変なのが写ってない? なんだか不自然に白い物が写っているんだけど」
「――まるで人の顔のようですわね」
「それは5年前に事故で死んだ奴だ」
「…………はい?」
えっ、今死んだって言った?
という事はもしかしてコレって……。
「心霊写真――ですわね」
「な、なんでこんなのが壁一面に貼ってあるの!?」
「何でも何もこれが我々のメインの作品達だ」
「奈央さん。こちらの写真のここを見てください」
奈津美ちゃんは最初に渡された写真の一部を指差していて、そこにも霊のような物が写っていた。
「え、ちょ、ちょっと。もしかしてこの建物にも出るの?」
「ここは中々の心霊スポットだぞ」
「奈央さん。もしかして幽霊とか苦手なんですか?」
「う、うん。少しだけ苦手――かな」
「でしたらキャンセルなさいますか?」
「こちらとしては撮影会は来週なので、依頼を受けないなら早く次の人を見つけないといけないので今すぐに受けるかどうか決めてほしいのだが」
「この依頼受けるわ」
「大丈夫なのですか? その――無理に受けなくてもよろしいかと思いますが」
「大丈夫よ。受けた依頼をキャンセルしたら部活の信頼が落ちてしまうもの。これ以上錬金術部の評判が悪くなったら誰も依頼を頼みに来なくなっちゃうかもしれないし」
「では地図を渡すのでここに向かってくれ」
写真部の人は懐から一枚の地図を取り出した。
場所を確認するとここからそんなに離れてはいないみたい。
「じゃあ明日のお昼に調査をしに行くわね」
「ああ、一通り部屋を回って人が入った形跡が確認出来なければそれでいい」
「幽霊が出てきたらどうすればよろしいのですか?」
「対応はそちらに任せる」
「……幽霊がいるの前提なんだ」
それから私達は写真部を後にして依頼を受けた事を報告する為に部室へと戻る事にした。
「それじゃあ2人で明日洋館に行くの?」
「はい。私と奈津美ちゃんで依頼に向かいます」
「私と希ちゃんも一緒に行ったほうがよくない?」
「あ、希は明日ゲーム買いに行くからパス」
「まあ、古い洋館を一回りするだけですし。そんなに危険は無いと思います」
「それに幽霊に効果のあるアイテムもいくつか用意していきますので大丈夫だと思いますわ」
「ならいいんだけど。絶対に無理はしないでね」
「わかってます」
それから私達は錬金術の練習をして、部活の終了時間になってから帰宅していった。
――次の日。
約束の時間より少しだけ早く到着した私は奈津美ちゃんが来るのを駅前で待っていた。
ちょうど時間に差し当たった所で奈津美ちゃんが駅からやってきた。
「お待たせしました」
「うん。ちょうど時間通りだしいいよ」
それにしても――。
奈津美ちゃんはフリルのついた真っ白なワンピースに真っ白の帽子とよそ行きのお嬢様のような格好をしている。
「どうかなさいましたか?」
「あ、ううん何でも。それじゃ行こっか」
「そうですわね。それでは参りましょう」
「まずはファミレスで打ち合わせだね」
洋館はそれなりの広さのようなので写真部の人から内部の見取り図を貰っておいたのだ。
私達はこれからファミレスでお昼ごはんを食べながら順路の確認をする為に駅前にあるチェーン店へと向かっていった。
私達がファミレスに向かっていると前方に見慣れた姿の女の子2人が歩いていた。
「あら? もしかしてあれは希さんと先輩ではありませんか?」
「本当だ。おーい、希ちゃ~ん。せんぱ~い」
希ちゃん達は私達に気が付いたようでこちらに向かって歩いてきた。
「あれ? 二人共どったの?」
「依頼に向かうんじゃなかったの~?」
「これから向かう所なんですが、その前にファミレスで少しだけ打ち合わせをしようと思ってまして」
「そうだったんだ~」
「お二人はどうしてこちらに?」
「希はゲームを買いに来てたんだよ」
「私もお買い物に来てて希ちゃんとはさっき偶然会ったんだ~」
「そうでしたか」
「ちょうど私達もお昼に行く所だったから良かったら一緒に行ってもいい?」
「わたくしは構いませんわ」
「私もいいですよ」
「じゃあ行こっか」
私達は偶然であった先輩と希ちゃんを連れてファミレスへと入っていった。
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