第20話

 なんだかんだで奈津美ちゃんが錬金術部に入ってくれて部員が4人になって活動をしていたある日、突然希ちゃんが新しい依頼を持ってきた。


「写真部からの依頼?」

「うん、さっき写真部の人達が来て詳しい事を話すから後で部室に来てほしいって言ってたよ」

「美里先輩は何とおっしゃってましたの?」

「写真部が来たとき先輩は丁度出かけてて希1人だったんだ。とりあえず希の独断と偏見で受けといたよ」

「――また勝手に依頼を受けて」

「どうしましょう。一度受けた依頼をキャンセルすると部の信頼に関わりますわ」

「――仕方ない。今回は私と奈津美ちゃんの2人で行ってくるから希ちゃんは先輩が戻って来たら伝えといてね」

「わかったよ」

「それでは写真部に向かいましょうか」

「じゃあ行ってくるわね」

「いてら~」


 希ちゃんはそのままソファーでお菓子を食べ始めた。

 ……頼むから錬金術の練習をしてよ。

 って言いたいけどもう何度言っても気が向いた時にしか練習したくないようなので諦める事にした。



 ――数分後。

 希の待つ部室に美里が帰ってきた。


「ただいま~ってあれ? 希ちゃんだけ?」

「おかえり~2人は依頼をしに出かけていったよ」

「そうなんだ~。所で何部からのお願いだったの?」

「写真部だよ」

「――えっ? 2人には写真部ってちゃんと説明したの?」

「言ったよ。なんか問題でもあった?」

「えっと。ここの写真部って――――――心霊写真部なんだけど」



 ――部室を出た私と奈津美ちゃんは写真部の部室へと向かっていた。

 

「写真部ってどちらにありますの?」

「文化部はこの部室棟に集まってるから何処かにあるはずなんだけど。この学校って無駄に変な部活があるから探すの大変なんだよね……」

「あっ、ここじゃない?」


 私は部室の前に掲げてある表札を確認して中に入ろうとした所を奈津美ちゃんに呼び止められた。


「ここは与真部(よしんぶ)ですわね」

「……一体何をする部活なの?」

「予震(よしん)を研究する部活ですわ」

「書き間違いなら表札を直しておきなさいよ!」

「わたくしに言われても困りますわ」

「次行きましょ」

「そうですわね」


 与真部を後にした私達は写真部を見つける為にまた1つ1つ部室の表札を確認しながら廊下を進んでいった。

 ――今度こそ見つけた。

 

「今度こそ写真部よね? ってあら? 扉がない?」

「こちらは写具部ですわね」

「だから何なのよそれは」

「写真と写具の違いは文字に十があるかどうかですわ」

「だから?」

「十(と)が無い。つまり扉がない部活ですわね」

「誰がこの部活に入れるの?」

「今までこの部活に入れた人はいませんわ」

「……そりゃあそうでしょうね」


 本当にこの学校に写真部なんてあるのかな。

 ここは一旦戻って先輩に相談したほうがいいのかもしれない。


「ありましたわ」

「今度はなに? 写貝(しゃかい)部とか?」

「そちらは社会について研究している所ですわね」

「本当にあるんかい」

「――けど、安心してください。ほら今度こそ正真正銘」


 表札を見たら確かにかすれた字で写真部と書いてある。


「なんか最初の方の文字がかすれてない? ここも違うんじゃないの?」

「いいえ、名前に写真が入っている部活は写真部しかないはずですわ」

「そうなんだ。――まあ私は錬金術部以外の部活は見学とかしてないから詳しくはしらないんだけどね」

「――それでは参りましょうか」


 奈津美ちゃんが扉を開くと中には壁中に写真が貼られた空間が広がっていた。

 そして床にも写真がこれでもかと山になって散らばっている。


「――ひっ。何コレ!?」

「写真――――ですわね。あらっ? あそこにわたくし達の写真もありますわ」


 部屋の片隅を見ると私達が部活をしている様子が写真に収められていた。

 ……部活中に写真を取られた記憶なんて無いのに一体いつの間に取られたんだろ。


「この部活なんか変じゃない? 一回戻ってみんなで――」

「どうやらそれは無理そうですわね」


 部室の奥から写真の山をかき分けながら首にカメラをぶら下げている人物が私達の元へと近づいて来た。

 そして、出合い頭にパシャリと一枚私達の写真を取られた。


「ちょ、いきなり何するの」

「ふん。学校から許可は取っている。文句を言われる筋合いは無いな」

「――そういえば写真部は行事や卒業写真の撮影を任されていると聞いた事がありますわ」

「そういう事だ。いかなる時でも写真部はこの学校の生徒の写真を撮影する権利が与えられている」

「なにそれ。それじゃあ盗撮じゃないの」

「いいえ、入学する前の書類にも生徒手帳にも書いてありますわ」

「そんなメチャクチャな事なんて書いてあるわけ――」


 私は生徒手帳を取り出してパラパラと見ると、確かに写真部の撮影はいかなる場合でも拒んではならないと書かれていた。


「なにこれ。こんなの知らないんだけど」

「ふん、書類をよく確認しないで入学するからそうなるんだ。今後は書類全てに目を通してから判断する事だな」

「まあ、いかがわしい写真は取られないですし表に出回る写真は全て生徒会にチェックされるらしいので問題は無いかと思いますわ。それに生徒からの抗議も全く無いとか」

「……そりゃ知らない間に撮られてて卒業してから卒業文集を見た時に発覚するんだから生徒からの苦情はないでしょうよ」

「ふむ、脱線しすぎたな。我々もこれから撮影があるので要件だけ伝えるぞ」

「え、ちょっと。まだ依頼を受けるなんて言ってないんだけど」

「あのちっこいのが了承は受けているはずだが」

「ちっこいのって希ちゃんの事?」

「おそらくそうですわね」

「お前たちがやらないならあいつにやってもらうぞ」

「ちょ、ちょっと待った」


 なんか怪しい部活だし本当は受けたくないんだけど希ちゃんが関わったら更におかしな事になりそうだし、ここは私と奈津美ちゃんの2人でやるしかない気がする。


「私と奈津美ちゃんがやるわ。いいよね?」

「ええ構いませんわ」

「いいだろう。――それではこいつを見てくれ」


 ――写真部の人は写真の山から一枚の写真を取り出して机に置いた。


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