第19話

 もうちょっとだけ商店街での希と先輩のバンドメンバー探しは続くよ。

 今仲間にしたのはバントメンバー、ハンドメンバー、実質パンダメンバーの4人だよ。

 バンドメンバーは全部で8人いるんだけど後何人見つける事ができるのかなぁ。


「あっ。希ちゃん危ない!」 

「――ほぇ?」


 希の真横を何処からか飛んできた棒のような物が希の髪の毛を少しカスって、そのまま地面に突き刺さっちゃったみたい。


「な、なんじゃこりゃぁあ!?」 

「希ちゃん。大丈夫?」

「うん。少しカスっただけだよ」


 地面に突き刺さった棒を見てみると上に旗みたいなのが付いていて、落下の衝撃で10センチくらいの穴が空いちゃってる。


「おい、ゴルフの邪魔をするな」


 声がした方を向くとゴルフクラブを持った人が立っていたよ。


「わわっ、この人はゴルフメンバーだよ」

「もう三文字なら何でもいい感じになって来てるね〜」 

「そこの人。商店街でゴルフをやったら皆に迷惑なんだよ」

「俺は俺のやりたい場所でゴルフをするんだ」

「希ちゃん。早くやっつけちゃおう」

「そうだね。希達が勝ったら仲間になってもらうよ。そして、今後町中でゴルフをするのも禁止だよっ」

「――いいだろう。では勝負だ!」


 ゴルフメンバーは新しい旗の付いた棒を取り出して、槍投げの要領で遠くに投げ飛ばしちゃったよ。


「あれが落ちた場所がゴールだ。ルールは少ない打数でボールを入れたほうが勝ちだ。同じ打数だったらこちらの勝ちにさせてもらうぞ」

「わかったよ」

「ではこちらから行くぞ」


 ゴルフメンバーはクラブを振りかぶってボールを打とうとしてる。


「今だよっ」


 希はカバンから突風を起こすアイテムを取り出して先輩に使ったんだ。


「えっ…ちょ……希ちゃん……あっ…」


 ゴルフメンバーがボールを打つ瞬間に先輩のスカートをめくって視線を微妙にそらす事に成功したから少しだけ変な方向に飛んで行ったんだ。

 ――お色気作戦成功だよっ。

 

「くっ、俺とした事が」 

「次は希の番だね」

「クラブが必要なら俺のを貸してやるぞ?」

「なんか細工されてるかもしれないから自分で用意するよ」

「ふっ、好きにするがいい」


 希はカバンから愛用のゴルフクラブを取り出して大きく振りかぶってボールを打つ動作を始めたんだ。


「今だよ!」


 希は密かにゴルフクラブに付けていた隠しボタンを押したよ。

 そしたらゴルフクラブの後ろからロケットブースターが出て来てその勢いを使っておもいっきりボールを打ったんだ。

 ボールはそのままゴールに向かって飛んで行ったよ。


「わ〜。希ちゃんすご〜い」

「ほぅ? なかなか良いクラブを持っているようだな?」

「えへへっ。希が作った特性ゴルフクラブだよ」


 そのまま希達はボールが飛んでいった方に歩いて行ったんだ。

 ――数分歩いて行ったら旗の近くにボールが2つ転がっていたよ。


「ホールインワンを狙ったんだが少しだけズレてしまったようだな」

「先輩がいなかったら負けてたよ」

「――希ちゃん。次はもうしないでね」


 ゴルフメンバーはボールの所に行って打つ動作に入ろうとしてるみたい。


「良い事を教えてやろう。俺はホールインワンショットの他に旗で包んで穴に落とす必殺技も使えるのだ」

「なんですと〜」

「フハハ、俺の勝ちだ。必殺旗包み」


 わぁあああ。旗に向かってボールが一直線にとんで行っちゃったよ。

 このままだと希が負けちゃう。

 何かこのピンチを打開するアイテムを使わなくっちゃ。

 え〜と、え〜と………あっ、これは!


「これを使うよ」


 希はカバンに偶然入ってた火炎爆弾を旗に向かって投げつけたよ。

 火炎爆弾は旗に当たった瞬間に凄い勢いで燃えだして旗が燃えて無くなっちゃった。


「ふっふ〜。旗が無かったら旗包みは使えないねぇ」

「くっ、こしゃくな」


 ボールはそのまま旗があった場所を通過してグリーンに落ちたよ。

 希もなんとかグリーンに乗せて後はパター勝負だ。


「ではこちらから行くぞ。これを決めたら俺の勝ちだな」


 ゴルフメンバーは精神を集中させてからクワッと目を開いてパターを打ったんだ。

 ボールはそのまま穴へと吸い込まれるような感じのコースで進んで行ってる…………これはまずい。


「先輩。最初に使ったアレを使って」

「アレ? なるほど、じゃあ行くよ〜」


 先輩はゴルフメンバーが最初に打つときに使った風を起こすアイテムを使ってボールの進む勢いを消していったよ。

 頑張ればもうすぐ止まりそう。


「そんな物で俺のボールを止められるものかああああ」


 わわっ。突然ボールにすごい回転がかかって少しずつだけど風に抵抗しながら進み始めちゃった。


「これが俺の最後の必殺技のウルトラトップスピンだ。俺のボールは穴に入るまで永遠に進み続けるぞ」


 こうなったら希もアイテムに頼らないで正々堂々勝負するしかないみたい。

 希は必死で色々と計算しながらボールを打ったんだ。


「あれ? 希ちゃん。そっちは方向が違わない?」

「こっちでいいんだよっ」


 希の打ったボールはゴルフメンバーのボールに向って行ってゴルフメンバーのボールを池へと弾き飛ばして穴に入ったよ。


「やったぁ。希の勝ちだよ」

「ふっ、まさか俺が池ポチャで負けるとはな」

「やったね希ちゃん」

「ふ〜。今回だけは負けるかと思ったよぉ」


 

 その後もなんだかんだで追加で4人仲間にした所で先輩の電話が鳴り出したみたい。


 ――プルルル、プルルル。


「あれ? 電話?」

「あっ、私の携帯みたい。ちょっと待ってね〜。――もしもし……あ、うん。わかった、それじゃあね〜」

「誰から?」

「奈央ちゃん達から。4人見つけたから合流しようって」

「ふ〜ん。こっちも沢山集まったし行こっか」

「そうだね〜」


 希達は仲間になったメンバー達と一緒に待ち合わせ場所に向かって行くことにしたよ。



 ――同時刻、駅前。


「あっちもメンバー集め終わったみたい」

「無事に終わったようで安心しましたわ」

「それじゃあ待ち合わせ場所に行こっか」

「そうですわね」


 私達は希ちゃん達と合流するために待ち合わせ場所へと歩いていった。

 待ち合わせ場所で希ちゃんと先輩を見つけたので奈津美ちゃんと一緒に向かっていく。


「あっちも集め終わったようですわね」

「そうだね〜。……って、何か様子がおかしくない?」


 あれ? 確かお互いに4人ずつ探そうって言ってた気がしたんだけど、明らかに人数が多いような。

 ――希ちゃんの後ろには異様といえる集団が集まっていた。


「――何だかかなり集めて来たみたいだけど全部で8人じゃなかったの? どうやら9人いるみたいなんだけど」

「実質パンダメンバーは二人で一人だから全部で8人だよ」

「……それでもこっちの4人と合わせたら12人になるんだけど」

「えっ?」


 希ちゃんは集めたバンドメンバーの数を数えだした。


「わわっ、何でこんなにいるの!?」

「――それはこっちが聞きたいんだけど」

「もしかして調合に失敗してメンバーが増えちゃったのかな〜」

「それは困りましたわね。ここは全員にライブをしてもらいますか?」

「そもそも楽器の演奏が出来るのか心配な人もいるんだけど……野球のバットを持ってる人とか絶対バンドメンバーじゃないよね?」

「あれはバントメンバーだよっ」

「……そもそもバンドメンバーですらないんかい。まったく先輩が一緒に居て何でこんな事になってるんですか!」

「あ~。言われてみればちょっと違ったかも~」

「いや、ちょっとどころの違いじゃないですよね? まずジャンルが違いますよね?」

「やっぱり野球の応援歌とロックバンドじゃ音楽性のジャンルが違いますわね」

「音楽性以前の違いでしょうが!」


 一体これはどう収集を付けたらいいの。

 ライブを成功させないと錬金釜を買うお金が手に入らなくて今後の部活動が……。


「あ〜。これなら私達が演奏した方がマシかも……」

「それですわ!?」


 奈津美ちゃんが目をキラキラさせている。

 ――これは何やら良からぬ事を思いついちゃったみたい。

 う〜ん。気は進まないけど一応聞いてみようかなぁ。


「……えっと、何か思いついたのかな?」

「わたくし達も一緒にライブをするんですの」

「16人のバンドって、それって色々大丈夫なの?」

「それじゃあ、8人バンド二組でやるのはどうかな〜」

「いいねぇ。人数が倍になった事で収入も二倍だよ!」

「ええい、もう覚悟は決めたわ。何でも来なさい」

「奈央ちゃんやる気だね〜」

「衣装はわたくしが用意しますわ」


 それから私達は奈津美ちゃんが用意したライブ衣装に着替えて野外ライブを始めた。

 ライブは何とか成功したみたいで、新しい錬金釜の購入代金と窓ガラスの修理代を稼いだ所でバンドは解散した。




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