第14話

「ねえ皆。今日友達のお手伝いを頼まれたんだけど、ちょっと私だけ早めに部活を終わってもいいかな?」


 部活が始まる前に美里先輩が早退を申し出てきた。


「構いませんけど何かあったんですか?」

「ううん。そんなに大変な事じゃないの。実は友達の妹さんの部活で使ってる道具が壊れちゃってその修理を頼まれたんだ〜」

「良かったら私達も手伝いましょうか?」

「いいの? まあ人数が多い方が私も助かっちゃうんだけど」

「普段お世話になってる先輩の為です――希ちゃんもいいよね?」

「え〜。希、面倒だから部室でゲームしてるよぉ」


 希ちゃんは相変わらずソファーに寝転んで、ポッチーを食べながら携帯ゲームをしていた。


「希ちゃんもたまには外で活動しようよ」

「希。今手が離せないから無理ぃ」

「ゲームしてるだけにしかみえないんだけど――それに最近は錬金術の練習もしてないと思うんだけど?」 

「希は天才だから練習しなくてもいいのぉ」

「――またそんな事言って」


 ……半分くらいはその通りだから反論出来ない。

 けどいくら才能があっても努力しないとまた大会で負けちゃうかもしれないのに。


「ま〜ま〜。本当は私一人で行く予定だったんだし、奈央ちゃんが来てくれるだけでも大助かりだよ〜」

「――そうは言ってもですね」

「さっ、時間も無いし早くいこ」

「いてら〜」

「うん。行ってくるね〜」


 先輩が部室の扉を開こうとすると外から扉が開かれた。


「入るわね――って何処かに行くの?」

「あっ、沙織ちゃん。ちょっと頼み事をされててね〜。所で沙織ちゃんは何か用なの?」


 生徒会の沙織先輩が部室へと入ってくる。


「この前の大会の結果を受けて錬金術部の部費アップが決まったの」

「やりましたね先輩。けれど部費を上げてよかったんですか?」

「私達はただ結果を出した部活を正当に評価してるだけよ。他の生徒に迷惑をかけずに大会で好成績を出してくれるなら文句は言わないわ」

「それじゃあ部室の廃部の件も――」

「迷惑をかけなければね」

「……えっ!?」


 沙織先輩はカバンから紙の束を取り出して私達の前に差し出した。


「生徒からの苦情がまだこれだけ来てるの。廃部を逃れたかったら優勝してもらう事は変わらないわ」

「そんな〜」

「要件はそれだけ。所で頼み事って言うのには全員で向かうの?」

「ううん。私と奈央ちゃんで行くから、希ちゃんはお留守番なんだ〜」

「そう。ならちょうどいいわ。希、ちょっと話があるからそこに――」

「やっぱり希も行くよ。さ〜みんな、出発しんこ〜」

「あっ、希。ちょっと待ちなさい」

「へへ〜ん。待たないよっ」


 希ちゃんは沙織先輩の横をするりと駆け抜けて外に飛び出していった。

 

「まったくあの娘は……」

「それじゃあ私達も行くね〜」

「その……失礼します」

「ええ、くれぐれも迷惑はかけないように」


 私達は沙織先輩に挨拶をしてから美里先輩がお願いされたっていう人に会いに行く。


「ところで先輩。誰に頼まれたんですか?」

「私の中学の時の友達なんだ〜。妹さんが部活で使ってる備品が壊れちゃったから修理して欲しいって頼まれたんだよ〜」

「壊れたんなら新しいの買えばいいんじゃないの?」

「部費が厳しいらしくてね〜。少しでも節約出来るならって事で頼まれたんだ。私も錬金術の練習になるからね〜」

「世知辛いねぇ」

「妹さんって事は中学生何ですか?」

「そうだよ〜。駅まで迎えに来てくれるみたいだから、そこから案内してもらうんだ〜」


 私達は学校の近くの駅から地下鉄に乗りこんで、数分進んだ駅で依頼人である先輩の友人の妹さんと合流した。


「もしかして貴方が妹さん?」 

「はい。初めまして、妹の理沙と言います」


 待ち合わせ場所に行くと、黒髪ロングのお嬢様みないな雰囲気を感じさせる美少女が待っていた。


「私は美里だよ〜」

「後輩の奈央です。先輩の付き添いで来ました。こっちは希ちゃん――ってあれ?」


 希ちゃんは遠くでスマホを片手にはしゃいでいた。


「希ちゃん何してるの?」

「オキモノgoだよっ。せっかく遠出したんだしここにしか置いてない置き物を捕まえないとっ」

「……それ面白いの?」

「うおおおぉ〜。レアな置き物きたー」


 とりあえずゲームに夢中な希ちゃんはひとまず置いて理沙ちゃんの話を聞こう。

 

「えっと、部活で使っている物が壊れちゃったんだっけ?」

「はい。私は陸上をしているのですが昨日部活で使っているスタートする時に足を乗せるスターターが壊れてしまって。買い換えようにも私達の部活は部費が少ないので資金の目処がつかずに困ってたんです」

「それで錬金術でそれを元通りにして欲しいって事だね〜」

「あの……こんな事を言うのは失礼なのかもしれませんが本当に修理が出来るのでしょうか? その、お姉ちゃんの友人との事なので心配している訳なのでは無いのですが私自身が錬金術と言うものに詳しくなくて――」


 理沙ちゃんは少しだけ不安な表情を浮かべている。

 まあ、私も実際に見るまでは半信半疑みたいな所もあったんだけど。


「う〜ん。修理とはちょっとちがうかな〜。壊れた物を新しい物に生成する――えっと今のを新品に作り変える感じだね〜」

「まあ実際に見てもらうのが早いんじゃないかな?」

「そうですね。案内するのでついてきてください」

「オッケー。希ちゃんもいくよ〜」

「わかったよっ」


 私達は理沙ちゃんの後に続いて中学校へと歩いていった。


 

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