第10話

「はあっ……はあっ……け、結構遠いよ〜」


 私は自分の限界を超えるスピードで倉庫へと辿り着いた。

 美里限定オリンピックを開いたら金メダル間違い無しのスピードだ。

 

「わ〜。相変わらず凄いな〜」


 倉庫の中は様々な材料がところ狭しとおかれていた。

 前回も圧倒されたけど、今回は更に新しく発見された材料まで沢山並んでいた。

 ここで手に入らない材料なんて月蝕の時にしか咲かない夜光草と7月にしか伸びない七夕竹とクリスマスの二日間だけちぎれるサンタの髭と……って、結構ここに無い材料あったかも。

 ――まあ、普通に使うには申し分がない感じかな。

 とりあえず、私が作るアルティメットポーションの材料は傷薬、水、朝露(あさつゆ)の雫だ。

 傷薬は傷が治る物なら何を使ってもいいし、水は液体なら何を使ってもいい。

 ただし、朝露の雫だけは代わりは効かないので、まずはコレを取りに行く。


「――あっ」


 朝露の雫は上級アイテムの作成によく使われるので、置いてある棚はかなりの人で高品質の物の取り合いをしていた。


「あっ、それは私が目を付けてた物なんだからっ」

「ふ〜んだ。早いもん勝ちよ」

「あ、あんたそんなに使わないでしょ。使う分だけ持って行きなさいよ」


 ――どうしよう。

 私なんかがあんな中に入ったらすぐに吹き飛ばされそう。

 けど、今は頑張って少しでもいい材料を手に入れないと。


「あ、あのっ。私にも分けて下さい」


 私は必死になって材料の入っているコンテナに手を伸ばす。

 

「す、すみません。それを……あっ、じゃあこっちなら……」


 ……ふう。

 何とか激戦地をくぐり抜ける事ができたので戦利品を確認する。

 

「えっと…………うん。品質も問題無いし、大きさも中々だね」


 次に取りに行く材料は傷薬だ。

 最初の材料を手に入れるのに思ったより時間がかかってしまった。

 ――新鮮な薬草がまだ残ってたらいいんだけど。

 

 私は薬草が置かれている場所を壁にかかっているマップで確認して走って向かう。

  

「――あっ。来るのが少し遅れちゃったかな……」


 到着するのが一足遅かったのか良さそうな薬草は殆ど他の人に取られてしまったようで、もう色が少し悪くなっているような低品質の薬草しか残ってないみたい。


「――どうしよう。いきなり予定が駄目になっちゃったよ〜」


 低品質の材料を使ったら完成品の品質まで下がってしまうので、完成度の高いアイテムを作るには調合する材料も全て品質のいい物でそろえないといけない。

 時間内にアイテムを完成させないと得点が0になっちゃう。

 かと言って、完成度の低いアイテムを提出したら他の学校より低い点数に……えっと、ううっ、どうすればいいの〜。


 私は何か代わりになりそうなものを探して倉庫内を走る。

 

「――ひぎゃっ」


 足がもつれて顔面から思いっきり転んじゃった。  

 ――鼻のあたりがちょっと痛い。


「大丈夫?」 


 近くにいた生徒が転んだ私を心配して手を差し伸べてくれた。


「うん。ありがほ〜」

「少しアザになってるわね。後で医務室で湿布でも貰ってきたら? じゃあ私も急いでるからこれで失礼するわね」


 私を起こしてくれた娘は走って行ってしまった。


「痛たた。――う〜ん。後で医務室に行って湿布を貰わないとな〜」


 ――ん? 待てよ。

 傷薬なら湿布で代用出来るんじゃないだろうか。

 一応、傷を治す薬みたいなもんだし。

 本来飲むものじゃ無いんだけど……ま、まあ私が飲む訳じゃ無いし良い…………のかな。

 

 他の物を探してる時間はないし、今は医務室に急ごう。

 私は倉庫から一旦外に出て、医務室があるテントに走った。


「あのっ、湿布薬を1つ下さい」

「おや? どこか怪我でもしたのかい?」

「あ、怪我と合わせると二個だった……あの、やっぱり二個ください」

「ん? よくわからないけど湿布なら沢山あるから必要なら持っていきな」

「その、出来れば新しいのを頂けませんか?」

「新しいも何も、ちょうどアンタが怪我人第一号だから今から最初の袋を開ける所さね」


 医療班の人は後から救急箱を取り出して、そこから湿布が入っている袋を取り出して開け口を破ってそこから二枚取り出して渡してくれた。


「ありがとうございます。それでは私はこれで」

「ああ、頑張ってきなよ」


 医療班の人にお礼を言って私は最後の材料を手に入れるために倉庫の中へと戻っていく。

 倉庫に向かう時に、材料を集め終えて会場へと向かって行く生徒と何回かすれ違ったので私も急がないといけない。


 倉庫の中は少しだけガランとしていて、すでに調合を始めている学校も結構あるんだなと言う事が伺えた。


「――えっと、最後は水なんだけど……」


 多分エベレストの天然水とかは早い人に取られちゃってるだろうけど、どこか有名な水が残ってる事を信じて1つづつ確認して行こう。


 私はマップで水の置いてあるコーナーを探して残っているものが無いか確認していった。


「……ううっ……一本も無い……」

 

 水は基本的な調合でも使うので使用する人も多いから沢山用意されてたみたいだけど全部無くなっていた。

 ……傷薬より水を優先するべきだったかな。

 

「こうなったら水道水を使うしか……けど、最後で妥協するのも」


 何か無いの? ……何か……何も無いよ〜。

 こうなったら水道水をろ過して少しでも品質を良くして使うしかないのだろうか。 

 ――何気なく見た場所に食材が置いてあるのが見えた。


「そうだ! 普通の水道水でも調理をしたら良い素材になるかも!」


 私は卵と肉と豚の骨などをカゴに入れて行く。

 

 ――材料集めは終わった。

 後は調合するだけだよ〜。


 

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