第7話

 私が錬金術部に入って数ヶ月。

 なんだかんだで今年最初の錬金術大会の日が訪れてしまった。

 私も希ちゃんもまだまだ新人だしそもそも部員三人でどれだけ頑張れるのか少し不安だけど、ここまで来たらもう突き進むしかないよね。


「――先輩そろそろ会場に入りませんか?」

「そ、そのっ。まだ心のじゅんびが〜」

「希は早く会場限定のお菓子が買いたいんだけど先に行ってていい?」

「駄目だよ。受付は皆で一緒にしないと。――先輩、受付終わっちゃいますよ?」

「そ、そうだね。流石に不参加で敗退する訳には行かないからね〜。……それに今回入れて3回もチャレンジ出来るんだし」

「駄目ですよ先輩。出場するからには全部優勝する位の気迫で行かないと」

「ん? 何で三回なの?」

「三年生は夏で引退だから二年生の私は今回と春と来年の夏の三回だね〜」

「そうなんだぁ」

「それじゃあ行きましょう」

「おー!」


 会場に入ると、中はかなりの人数でごった返していた。


「わ〜。沢山いるねぇ」

「錬金術の大会ってかなり出場者がいるんですね」

「そうだね〜。少し前は参加者10人とかだったんだけど、今は数百人はいるからね〜」

「凄いねぇ」

「――それにしても、皆変わった服を着てますね。錬金術をする人ってかわいい制服の学校が多いんでしょうか?」

「あーあれはユニフォームだよ〜」

「えっ!? 私そんなのあるって聞いてないんですけど。てか私達もアレを着るんですか?」

「へっへ〜。実は二人の服は私が作ってきたんだ〜」


 先輩はカバンからフリフリの沢山ついたいかにも魔法少女と言った感じの服を取り出した。


「ジャジャ~ン。どう? かわいいでしょ〜」

「いやいやいやいや。こんな可愛い服無理ですって。大体いつの間に私達のサイズを測ったんですか!?」

「実は私って見ただけでサイズが解るんだ〜」

「まさか、この前部室で着替えをした時に……」

「えへへ〜」

「ねえ、先輩。希は魔法少女より宇宙服を着て戦いたいんだけど」

「……ロボットに乗るのは反則だから駄目だからね」

「なんだ、ならその服でいいや」


 希ちゃんは小柄で可愛いし、先輩は色々と大きいからこう言った服が似合うんだろうけど私なんかが着てもいいのだろうか……。


「じゃあ、受付は混んでるし先に着替えちゃおっか」 

「そうだね、こういう服は初めて着るから楽しみだよぉ」

「――え〜と。奈央ちゃん?」

「えっ。あ――はい」

「どうしたの? もしかしてこの服を着るのが嫌なの?」

「いえ、別にそういう訳では――」


 ――先輩が心配そうに私の事を見つめてくる。

 私が服を着るのをためらってチームの結束を悪くするわけにもいかないし……ええい、仕方ない。

 これも私と錬金術を出会わせてくれた先輩のためだ。

 多少の羞恥心は捨てよう。

 似合わなくて笑われたってかまわない。

 今は大会で勝つことだけを考えよう。


「先輩。更衣室へ行きましょう。皆で同じ衣装を着て頑張りましょう」

「――うん」

「それじゃあ行こうか」


 私達も更衣室に向かって着替えを済ませる。


「お〜。なかなかいい感じだねぇ」

「奈央ちゃん。かわいいよ〜」

「そっ、そうですか?」


 自分の事はよく分からないけど、二人は凄く似合っていた。

 デザインは同じだけどカラーはそれぞれの人物をイメージしてるみたいで、私は青 先輩はピンク 希ちゃんはオレンジの服だ。


「それじゃあ受付に行こっか」

「おっと、忘れてたよっ」

「覚悟をきめないと」


 ――受付の人はだいぶ少なくなっていて、私達が最後のエントリーみたい。


「エントリーは三人でよろしいでしょうか?」

「はい。よろしくお願いします」

「今回の大会は戦術競技一名、調合ニ名、素材採取二名、重複出場は不可となります」

「……だいぶ足りませんね」

「こればっかりは何ともならないからね〜」

「分担はどうしましょう?」

「え〜と、じゃあ私が戦術競技に出て――」

「希が戦術競技をやるよ」

「――えっ!?」


 希ちゃんの突然の宣言に私だけでは無く先輩までも凄く驚いているようだ。


「希ちゃん大丈夫? 危ない事になるかもしれないよ? 心配だしやっぱり私が」

「大丈夫だってぇ。それに、希には秘策があるんだよ!」


 ……何だろう。

 いつもあんなにやる気がない希ちゃんがこんなにやる気になるなんて、本当に何か凄い秘策があるのだろうか。


「そこまで言うなら解ったよ。けど、駄目そうならすぐに降参してもいいからね?」

「解ってるって」

「それじゃあ残りは先輩が調合で私が採取でいいですか?」

「そうだね〜。今回はそれで行こっか」

「はい。皆、頑張って行くよ〜」

「お〜!」


 今から私にとって最初の大会が始まる。

 人数も足りないし正直不安しかないけど、今のメンバーならきっといい結果が出るって信じてる。

 まずは希ちゃんの戦術競技からだ。

 普段はグータラでワガママだけど錬金術の才能はかなりの物を持ってると思う。

 ――頑張って来て、希ちゃん!



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る