第3話

 私と先輩そして、新たに錬金術部の仲間になった希ちゃんの三人は掲示板の依頼を解決するために魔獣? がいる場所へと向かっていた。


「――あの、先輩。本当に危なくないんですよね?」

「大丈夫だよ〜。武器も色々と持ってきたしね〜」

「武器って、やっぱり危ないんですよね? 何かと闘うんですよね?」

「私も最初は心配だったけど、慣れたら大丈夫だよ!」

「面倒そうなら希は見てるだけにするね」


 学校を出て裏山を進んでいると、周辺から何かヌルヌルとした物が動いている音が聞こえてくる。


「――あの、何やら聞き慣れない音がするんですけど」

「しっ。静かに。近くにいるみたいだから、ここからは慎重にね」

「ん。わかったよ」


 草むらを抜けると、人より一回り位大きいくらいの水色でヌルヌルとした物体がゆっくりとうごめいていた。

 ――ゲームとかでよく見るスライムと言った感じだ。


「ななな、何ですかあれ。何であんなのがいるんですか?」

「えへへ〜。実はうちの学校の科学部がたまに変な生物を作っちゃうんだよね〜。それで、学校の外に逃げちゃった魔獣の退治を依頼として出してくれてるんだ〜」

「ちょっと見せてください」


 私は先輩から依頼書を奪い取った。

 紙には、依頼内容――裏山に逃げたスライムの退治。危険度 低――と書かれている。


「何でこんな非常識な依頼があるんですか!」

「そう言われても。これ系の依頼は結構よくある依頼なんだよ〜」

「最初に見た陸上部の備品の修理で良かったじゃないですか。何で最初の依頼がいきなり未知の生物との戦いなんてしなくちゃいけないんですか!」

「いや〜。依頼料がよかったからね〜」

「……やっぱり、希もう帰るね」

「あっ、希ちゃん下手に動いちゃ駄目っ」

「――えっ?」


 スライムは帰ろうとする希ちゃんの動きに反応して今までのゆっくりした動きから一変して凄いスピードで希ちゃんへとジャンプしての希ちゃんを体の中に飲み込んでしまった。


「ぎゃ〜っ。希、食べられちゃぅううう。助けてお姉ちゃぁああああん」

「せせせ、先輩。怪我どころか食べられちゃいますよ?」

「大丈夫だよ〜。ほら見て」


 何で先輩はこんなに冷静なんだと私は気が気じゃなかったが、スライムに飲み込まれた希ちゃんに目線を移動させる。

 そこにあったはずの物は無残にも全て溶けて無くなっていた――――服だけ。


「――なな…なにこれ…希の制服が!? キャーッ…イヤーッ……」

「……先輩。何ですかアレは?」

「だから怪我はしないから大丈夫だって言ったじゃない――まっ、まあ服が溶けちゃうから女子でこの依頼を受ける娘はあんまりいないんだけど」

「じゃあそんな依頼受けないでくださいよ〜」

「いや〜うちの備品も買い替えが必要なのが結構あってね〜」


 スライムは服を溶かして興味が無くなったのか、希ちゃんを吐き出して次は私達に向かって突撃してきた。


「先輩、スライムが向かってきたんですけど」

「大丈夫、武器でやっつけちゃうから」


 先輩はカバンから杖を取り出してスライムへと向かっていく。

 先輩は杖でスライムを叩くがぷにぷにの体に弾き返されて、そのまま飲み込まれてしまった。


「…あっ…駄目っ…溶けちゃう……」

「先輩!」


 先輩も希ちゃんと同じように服だけを溶かされた後吐き出された。

 先輩ってああ見えて意外と大きい――っと、今はそんな事してる場合じゃない。

 二人がやられた今、次の目標は私だろう。


「うわあああん。希もう帰るぅ」

「うう〜油断しちゃったぁ」


 先輩は恥ずかしそうに体を隠して、希ちゃんは泣きわめいている。

 

「――何か、何かスライムに効きそうな武器は」


 私は必死で先輩のカバンの中から武器を探す。

 杖のように叩く武器は跳ね返されてしまうだろう。

 

「――なんだろうコレ?」


 丸くて硬いこの形はまるで――爆弾?

 

「ええい」


 私はそれを取り出してスライムに投げつけると、スライムに当たった瞬間爆発を起こしてスライムは黒焦げになって動かなくなった。


「――倒した?」

「奈央ちゃ〜ん」


 先輩が走って来て私に抱きついてきた。

 希ちゃんは草影からまだこちらの様子を伺っているみたい。


「――これで、依頼達成ですか?」

「うん。そうだねっ」

「――終わったの?」


 希ちゃんもそろそろと出てきて、私達は帰る事にする。


「あっ、奈央ちゃん後ろっ」

「――えっ!?」

 

 次の瞬間、私は突然後ろから出てきた別のスライムに飲み込まれた。

 私も裸にされた後、先輩と希ちゃんがさっきの恨みとスライムに爆発を投げつけて別のスライムもなんとか倒される。


「……ううっ…何で私まで……」

「……そういえば一匹とは何処にも書いてなかったね」

「――これからどうするの?」


 依頼が完了した場所には何も身に着けていない少女が三人残されている。


「と、とりあえず部室に戻ろっか」

「どうやって戻るんですか?」

「先輩が戻って何か着るもの取ってきてくれるの?」

「そ、それは〜」


 ――数分後、依頼を受けてからなかなか帰ってこない私達を心配した購買部のコウちゃん先輩がやってきて、制服を持ってきてくれた。


「――あの、新しい制服を貰ってよかったんですか?」

「あ〜。依頼で使った消耗品は購買部の方で無料で補充するから心配しなくていいよっ」

「…………制服って消耗品だったんですね」

「もしかしてこういう事ってよくあるの?」

「あはは〜。たまにかな?」

「……希。やっぱりこの部活に入るの辞めようかな」

「そんな〜。辞めないでぇ〜」


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