拝啓、生まれたばかりのわが子へ。

 未来ある君に、この手紙を託します。

 何年、何十年かかってもいいから、

 僕が生きていたことを、

 二十数年の生命の証を、

 どうかあの人のもとへ届けてください。


 あの日、君たちの前で見せたのは、

 遠い遠いまちへの片道切符でした。

 行きたくなんかなかった。

 きっと、同じ列車に乗っていた人は皆、

 そう思っていたことでしょう。

 誰も好き好んで選んだ道では

 なかったのですから。

 自分よりも、君たちの笑顔のために。

 成長していく君をそばで

 見守ってあげられない僕を、

 許してくれだなんて言いません。

 どうか、忘れないで。

 少しでもいいから、覚えていてください。


 お母さんの言うことをよく聞いて、

 元気にしていてくださいね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る