何もかもが嫌だった。

嫌嫌嫌嫌厭嫌。学校。対して仲の良くないクラスメイト。どうせクラス替えしたら関係は終わる。家。記憶の中の母親は優しく微笑んでいるけれど生憎記憶にすがって生きていけるような人間じゃあなかった。父親は…父親は。。。。

「あんなやつ」

そうベットに寝転んで吐き出す。そんな風に言っておきながらやたら気を使って彼の目障りにならぬように生きている。そう反抗する気なんてもう残っていない。完璧な無気力、だって無力なんだからしょうがない。言い訳と言い逃れと無気力無力のミルフィーユが出来上がる。つまりそれって俺の事。

最初のうちはただただ恐怖だった。何をしても殴られる。何もしなくても殴られる。理不尽だなぁ家出たいなぁとは常々思っているが所詮この年で家を出たって行く当てなど何処にもないのだ。

暗い昏い夜、電気もつける気にならない。半分ほど開けたカーテンの隙間がまぶしくて生きてるって感じる。正直もう何で自分が生きてるのかわからない。数時間前に酒瓶で殴られた肩が痛む。俺何かしましたか、そうですか存在自体がだめですか。

死にたいなんて最初は思った。でもやっぱり俺は俺で、「死ぬ」ということが少し怖かった。散々死にたい死にたい言ってるくせに。人間なんてそんなもんなのかな。そのうち「死にたい」が「消えたい」になった。数少ない俺のことを知ってるやつも俺のことを「知らなかった」ことになって、痛みもなくこの世界から存在が抹消されている。そうなりたい。「もし魔法が使えたら何したい?」ってきかれたら真っ先に「この世界から自分を抹消する」って答える。

この頃そんなことばっかり考える。唯一学校にも父親にも縛られない深夜。独り「消えたい」なんて考えてるなんて相当頭がおかしくなったのかもしれない。

だって今日は黒い靄の様なものなんか見え始めたりなんかしてきた。精神が疲れている人間はありもしないものを見るという。俺を包むように黒い黒い靄が燻る。気のせいか頭が痛い。黒い靄はどういう示唆なんだろう。

――いやまて、おかしい

幻覚なら机が黒い靄に溶かされているのはどう説明するのだ??

おかしいおかしいおかしい。これも幻覚、それとも夢…?

一層黒い靄が俺の方に押し寄せてくる。


――あ、この世界から消えてなくなれるのかな


不思議な安堵感で胸がいっぱいになった。

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