第10話「夏」

 僕は夏が嫌いだ。

 親戚が家に来る。

 つい1か月前に合ったような人間も、

 約一年ぶりに合うような遠い親戚も、

 一緒くたにやってくる。


 僕は夏が嫌いだ。

 セミが五月蠅い。

 そして熱い。

 ひんやりマットの上に寝転がっていても尚、

 その暑さが緩和されることはない。


 僕は夏が嫌いだ。

 夏が嫌いな自分が嫌いだ。

 下らない劣等感に苛まれ、誰かと比較する。

 セミのように一生懸命にもなれやしない。

 百という時を与えられて、欲望に忠実なだけの凡愚に成り下がる。


 僕は夏が嫌いだ。

 だから、早く冬になれと願う。

 きっと、冬は一人だから。

 きっと、冬は冷たいのだから。

 ――くだらない。


 僕は夏が嫌いだ。

 太陽は人を等しく照らす。

 影に入り、籠っているのは自分だ。

 そこから一歩、出たいというのなら。

 きっと僕は汗を垂らし、歩き出すべきなのだろう。







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