第6話 急襲

俺はガードレールが途絶えてから、倒れている木を避け、森が開けた方向に

歩いていた。道路に木が生えているなんてありえないんだから、木が無い方向が

道路なんだろうと思っていたからだ。


しかし、もう土砂なんて無くなっておかしくないはずなのに、

コンクリートが見えてこない。

道を間違えたからな?でも他に開けた方向なんか無かったし、このまま進めば

どこかしら着けるだろうと俺は思っていた。


それから20分ほど歩いただろうか。俺は完全に道に迷っていた。

もう開けた方向はどこにも無い。いつの間にか完全に森の中にいた。


しまったな。これだったら回り道をお願いしたほうが良かったかもしれない。

そうやって歩いて行くと石畳を俺は見つけた。


石畳があるなら、どこかの寺の境内にでも迷い込んだんだろうか。

俺はその石畳を進むことにした。

しかし、その先にあったのは廃寺のような木造の廃墟だった。

そんな時、俺は柱にあるものを見つけてしまった。


歯型。


なんでこんなところに歯型が?と思ったが、すぐに山中さん達の言葉を思い出した。


「歯型があったら、そこは了がいる場所だよ。」


まさかとは思いつつも、俺は不気味さを感じて、建物から離れようとした。


メキメキメキ


後ろから木の軋む音がして、俺は驚いて振り返った。

だが、そこには何も無かった。


いくら不気味とはいえ、昼間に出るか普通。

とは思ったが、さすがに怖くなってきた。


「あれ?」


よく見ると、さっきは無かったはずの歯型が目の前にあった。


「は?え?なんで?」

                           メキメキ

メキメキ

        メキメキ


                メキメキ


と、いろいろなところから音が聞こえてくる。

自分の目前で歯型がどんどん付いていく。


俺は心臓が止まりそうになって、その場から走った。

元の道を走る俺。見ると俺が通ってきた道や倒れている木の根元など

あらゆるところに歯型が付いている。


俺は必死に逃げたが、そんな時走っていた石畳の一部が崩れ、つまづいて

転んでしまった。


俺は足が何かに落ちそうになるのを感じた。咄嗟に振り向くと、それは穴だった。

石畳の真ん中に、縦横1m程度の穴があったのだ。

その上にたまたまあった石と板が石畳のように見えていただけだった。


穴の底はまったく見えない。暗闇が続いている。

こんなところに落ちるわけにいかない。

ましてや今俺は何かに追われているかもしれないのに。


俺は這い上がり、穴から完全に足が出ようとした時だった。


「痛っ!!」


足に痛みが走って俺はその方向を見た。

すると目が血走って恐ろしい形相をした子供が俺の足を噛んでいた。


俺はあまりの恐怖に驚き、子供を蹴ろうとする。

今にして思えば本当の子供だったらひどいことなんだが、

当時の俺はそんなことも微塵に思っておらず、必死だった。


その子供はずっと食らいついて離さない。

よく見ると子供には両腕が無かった。


子供を蹴りながらもは逃げ出した。痛みなんか構っていられない。

これが了なのか。昼間に出てくるものなのか!しかもこんなにはっきりと。

完全にパニックになっていた俺は必死に走り続けた。


それからどれくらい経っただろうか。いつの間にか俺はあの道路に戻っていた。

良かった。俺は戻れたんだ。助かったと思って痛みがあった足元を見ると、

たくさんの子供が俺の方をじっと見ていた。



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