第4話 歯型

翌朝、お世話になった山中夫妻の知り合いが原付を直せるかもとのことだったので、

言葉に甘えて昼まで村で過ごすことににした。


俺は村を去る前に手塚村に伝わる「了」について詳しく調べてみようと

思い立った。

だが、「了」について道行く村人に聞くと、知らないか、嫌な顔をされて、

「そんなこと聞かないほうがいいよ。」と言われるだけだった。


話を聞いていくうち、ある1人がこんなことを教えてくれた。

「歯型をこの村で見かけたら、逃げたほうがいいよ。」


歯型?了というのはどうやら歯型を残すらしい。

だが、それ以上は何もわからなかった。


俺は山中夫妻の家に戻ると、バイク屋をやっているという近くの親戚が来ていた。


「あ、須藤さんですか。これねー、ジェネレータがやられてますよ。

 もう直らない。」

「本当ですか?嫌だなぁ。どうやって宮城まで行こう。」

「鈍行列車ならそんなにしないんじゃないですか?もちろん時間はかかりますが。」

「駅までってバスがあるんでしたっけ?」

「バスもいろいろ乗り換えないといけないんだよね。車が無いと本当に

 不便な村だから。ここは。名産みたいなものは何もないしね。」

「本当に無理そうですか?」

「ん〜、まぁ、俺の範疇では直らないかな。運が悪かったとしか

 言いようがないよ。俺がこの原付は処分しとくから。駅の近くまでで良かったら

 バスじゃなくて俺が送るよ。」


そういって、その親戚の方、斎藤さんは俺の原付を片付けた。

俺はその時見逃さなかった。

俺の原付のジェネレータには、歯型が付いていていて、噛み切られたように

ジェネレータのパッキンやコイルが切られていた。

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