ずっと・・・

勝利だギューちゃん

第1話

「ずっと一緒だよ」


幼馴染の女の子に言われた言葉・・・

その時は、そうなると思っていた・・・

家が隣同士という、お決まりのパターンだが、

よく遊んでいた・・・


大きくなったら、その子と結婚して、子供が出来て、

幸せな家庭を築く・・・

そう信じていた・・・


でも、運命とは時に残酷だ・・・


小学校のに入る直前、いきなり父の転校が決まり、

僕は、遠くへ引っ越す事になった・・・


幼稚園の卒園式の終わった後に、引っ越す事になった・・・

隣に住んでいた幼馴染のその女の子・・・


「るなね、大きくなったら、お花屋さんになるの・・・」

いつも言っていた・・・

ルナ・・・ラテン語でお月さまのことだ・・・

その名の通り、とてもかわいかった・・・そして、とても明るかった・・・


ただ、時々見せる寂しそうな表情が、幼心に気になっていた・・・


今にして思えば、これが僕の初恋だろう・・


引っ越し当日、親同士が挨拶をしていた。

僕は照れくさくて、その子に挨拶が出来なかった・・・

車の中に隠れていた・・・

車は駅に向かって、走り出した・・・

遠くなっていくが、その子が泣いているのは、わかった・・・


でも、またすぐに再会出来ると信じていた・・・

最初の頃は、「いつか会いに行く」と、思っていた・・・

でも、「去る者は日々に疎し」の言葉通り、だんだんその子の事が、気にならなくなった・・・


引っ越し先では、すぐに友達ができた。

両親共に、気さくで人当たりのいい性格なので、僕もその血を引いているのだろう・・・

適応能力だけは、幼い頃から合ったようだ・・・


やがて、僕は中学生になり、高校生になる・・・そして、進学し、就職をした・・・


相変わらず、鈍感なのか、ポジティブなのか・・・

辛いことがあっても、それを辛いと感じる事はなかった。

周囲からは、「よく平気だな」と、冷やかされたものだ・・・


だが、恋人・・・彼女は出来なかった・・・

「面白い人」といわれたが、所詮は「面白い人」どまり・・・

恋愛対象としては、見られていないようだ・・・


でも、それでもよかった・・・


ある日、酒の席で、初恋に人についての話題となった。

僕は、既に封印していた、あの子の事、るなちゃんの事を思い出した。

でも、さすがにこればかりは照れくさかった。

「アニメのキャラが初恋」と、お茶を濁しておいた。


フィクションの世界だと、初恋の子と、どこかでばったりなんて事もあるだろうが、

そんな事は、実際に起こるはずもない・・・

第一会ったとしても、お互いわからないだろう・・・


ある日、僕は休みを利用して、旅に出た。

気ままな旅だ・・・

ちょっと贅沢して、特急に乗ることにした・・・

たまにはいいよね、優越感にひたるのも・・・


指定席に着くと、荷物を網棚に乗せる。

「これから、楽しむぞ」

心の中で、そう叫ぶ・・・


「乗車券を拝見します」

しばらくすると、車掌さんがやってきた。

見ると、女性の方のようだ・・・

(最近は、女性の方も、鉄道業界で働いているからな)


急いで、財布から乗車券を取りだした。

乗客ひとりひとりから、切符を預かり、確認の印を押し、返していく・・・

その繰り返しだった。


(車掌さんも、大変だな・・・)


やがて僕のところへ来た。

車掌さんは、笑顔で「乗車券を拝見します」と、声を掛けてきた。

「はい、どうぞ」

僕は切符を、渡した。

車掌さんは、確認の印を押し、「ありがとうございます」と、僕に渡した。

そして、次の席の方へと向かって言った

(女性の方のほうが、愛想がいいので向いているかもな・・・)


そう思っていると・・・


「あっ、陽介くんだ」

その車掌さんが、僕のところに来た。

「陽介くん、あなた、日向陽介くんでしょ?」

「そうですけど・・・」

(なんで、この車掌さんは、僕の名前を知っているんだ)


「あの・・・あなたは・・・一体?」

「私よ、私・・・美月ルナ」

「ルナ・・ルナちゃんなの・・・」


その瞬間、完全に封印していた扉が開いた。

間違いない、ルナちゃんだ。

僕の初恋の、ルナちゃんだ。


「久しぶりだね。元気してた」

「ああ、それだけが取り柄だからね」

「びっくりした。まさか、こんなところで会うなんて・・・」

「こちらこそ、びっくりだよ・・・」

「あのね、私は今ね・・・」

とても懐かしかったが、大切な事を思い出す。


「あの・・・ルナちゃん」

「何?陽介くん」

「お仕事中じゃ・・・」

ルナちゃんは、我に変わる。


「そうだった。嬉しくて忘れてた。」

「そそっかしいね」

「じゃあ、陽介くん、また後で話そうね」

そう言って、仕事に戻る。


ルナちゃんに、宿泊する旅館は知らせておいた。

そして、その夜、旅館にルナちゃんから電話があり、

旅館のロビーで、会うことにした。


しばらくすると、ルナちゃんがやってくる。


「本当に久しぶりだね。すぐに陽介くんだって、わかったよ」

「僕は、わからなかった・・・」

「男の子と一緒にしないで。女の子のほうが、記憶力はいいんだからね」

「ハハハ、そりゃそうだ・・・」

昔話に花が咲く。


「私、今は車掌さんをやってるんだ」

「・・・確か、お花屋さんになりたい・・・って、言ってたよね?」

「覚えていてくれたんだ、ありがとう、でも・・・」

「でも、世の中上手くいかないね・・・」

幼い時に見た、寂しそうな表情がそこにある・・・


「でも、すごい偶然だね、陽介くん」

「そうだね、ルナちゃん」

「どのくらいの確率なんだろうね。」

少なくとも億単位ではあるだろう・・・


「でも、ルナちゃん、どうして僕とわかったの?」

「言ったでしょ!女の子の記憶力は、男の子以上だって・・・」

「あっ、そう」

それ以上は、訊かなかった。


車掌になったのは、500系新幹線を見て、鉄道に興味を持ったためらしい・・・

まあ、夢ていうのは、コロコロ変わるものだ・・・


「陽介くん、結婚してるの?」

「してると思う?」

「彼女はいるの?」

「いると思う?」

「ハハハ、私と一緒だね」

「ひとりなの?」

以外だった・・・

ルナちゃんなら、とっくに結婚しているものと・・・


「世の中、上手くはいかない」

そういう意味もあったのか・・・


「陽介くん、私今度、運転士の試験を受けようと思っているの。

自分で、列車を運転してみたいんだ・・・

どうしたらいいかな・・・」

「もう、答えは出てるじゃない・・・」

「えっ?」

「今、『運転したい』って、言ったじゃない。進むべきだよ、ルナちゃん」

「ありがとう、陽介くん、私がんばるね」

「そのいきだよ、ルナちゃん」

ルナちゃんは、僕の手を握る。


子供の頃は普通にしていたが、大人になると照れくさい・・・


「陽介くん、一言いい?」

「何?」

ルナちsんの、僕の手を握る力が、ぐっと強くなる。


「これからは、ずっと一塩だよ・・・」

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ずっと・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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