第4話 担任はチャラ男

慌ただしく開かれた扉の音が静寂に満ちた空間を切り裂き、それと同時に二人の男女が部屋に息を切らしながら入ってくる。


「すみません、遅刻しました!」


裕也は、教室に入ってすぐに、視界に入った先生に大声で謝罪する――が、直後、その謝罪した相手が、本当に先生だったのか、と一瞬疑う。

そもそも、壇上にいたから、という理由だけで先生と判断したため、先生か否かは分からなかった。


「まさか、新学年初日から遅刻する奴がいるとはな……」


誰が見ても、明らかに染めたとわかる茶色に染まった長い髪が揺れる。


「まだ先生歴長くないが、こういうもんなのか……?最近の高校生って」


二十代くらいの見た目の年齢にそぐわない発言をする壇上の男性。

明らかに、先生というより、そこら辺のヤクザと言った方が納得の行くような人物だった。


「え〜っと、雨宮裕也と綾坂結衣……だっけ?ほれ、そこの席にさっさと座れ。丁度、今から話をしようとしてたところだったから。ちなみに、俺がお前らの担任だからな。このナリでも一応は先生だから」


……先生らしかった。

先生が指差す方向を見ると、そこには確かに、誰も座っていない机が二席開いていた。教室の前端のところが。

この学校は出席番号が五十音順のため、それは当たり前のことだったし、小中学校も同じ仕組みだったため、裕也も結衣も慣れているつもりだったが、遅刻で目立ったこともあり、今回ばかりは羞恥心を感じたようだった。

結衣に至っては、裕也の横で空気になっていたにも関わらず、死にそうになっていた。



そして、間も無くして諸連絡etcが始まり、二時間ほどぐだぐだと繰り返した後、解散になった。

ちなみに、この高校では面倒臭い行事は極力省かれるか省略化されていて、始業式も例外でないため、放送で校長先生が十分ほど話をするだけで終わった。


――――――


「案外、遅刻しても何も言われないもんなんだねぇ」


「そうだな」


帰宅途中、結衣が裕也に話しかけるが、裕也はそれに生返事で応える。


「どうしたの?上の空みたいな感じだけど」


「いや……、滅茶苦茶眠くて」


普段の睡眠時間よりも三時間も睡眠時間が短かったのだから、眠いのも仕方ないだろう。

だが、上の空の理由は、それだけではなかった。


(あの先生……、どっかで見たことある気がするんだよなぁ。面識があれば、間違いなく覚えてそうなもんだけど)


いくら記憶を探っても思い出せそうになかったため、そのことは頭の片隅に置く事にした。


「でも、あんな先生もいるんだねぇ。世の中、広いもんだねぇ」


おばさん臭い台詞を吐く結衣。

新しい担任の先生、神楽坂煉先生。二十七歳と言う年齢で既に教員歴四年。派手に染めてる髪もさることながら、趣味は人間観察とギャンブルという、色んな意味で常軌を逸した人物であった。


「あぁ……、そうだな」


結衣に再度話を振られたが、裕也は眠すぎてそれどころではなかった。

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