第18話 困惑
次の日から、俺と昂は別々に学校に行くことになった。
一人で学校に行くのは、これが初めてのことだった。
今までは、小学生の頃から昂とずっと一緒に通ってきたから何だか変な感覚だった。
汽車の窓から、一人、ぼんやりと外を眺める。
話しかける人がいないって、こんなに退屈なものなんだなと思った。
しばらくして、汽車は駅へと到着した。
同じ高校の生徒たちが数名、降りていく中、俺は高坂の姿を見つけた。
「おはよう」
「おはよう、快都」
高坂はいつもと変わらない様子で、俺に挨拶をしてくれた。
付き合うことになったからと言って、俺たちの関係が急に変化したわけではなかった。ただ、呼び方だけが名字から下の名前に変わっていた。
どちらから、ということはなかった。ただ、自然と。
これが付き合うってことなのか、と俺は思った。
付き合って数日。まだ、手も繋いだことがない。
というか、数日前まで友達だった俺たちが手を繋ぐ?何だか、想像がつかなかった。
付き合うってことは、これからそういうこともしていくってことなんだろうか…。
「なあ、付き合うってどんな感じ?」
休み時間、俺は彼女がいるクラスメートの鈴木に聞いてみた。
「どうって?別に、もう慣れたけど」
「手とか、繋いだりするのか?」
「するだろ。小学生かよ」
「やっぱ、そうなのか…」
「何、お前ら、まだ手も繋いでねえの?」
「えっ、いや、その…」
「あのなあ、近江。手を繋ぐとか、序の口なんだよ。そんなんで緊張してたら、キスとかどうなるんだよ?それ以上もあるんだぞ?」
鈴木の言葉に、俺は顔が真っ赤になってしまった。
キスって…それ以上って…マジかよ…。
今まで、本当に恋愛に疎かった俺は、今まで友達とそんな話をした経験もなかった。
俺たちの住む町は市の中心部からかなり離れた田舎に位置していて、保育園からほぼずっと同じメンバーでクラスが持ち上がってきた。俺は生まれたときからこの町に住んでいて、昂は小学1年生の時に引っ越してきた。すぐに仲良くなった俺たちは、来る日も来る日も一緒に遊んでいた。
中学1年の5月に、郁奈が転校してきた。親の仕事の都合らしかったが、こんな田舎町には似つかわしくない美少女だなと思った覚えがある。その頃、女子と話すのが恥しかった俺は、郁奈とはしばらく話をしたことがなかった。
仲良くなったきっかけは、ポケモンだった。
3歳下の弟がいる郁奈と、6歳下の弟がいる俺、そして昂はともにポケモンのゲームをやっていた。クラスの女子たちはポケモンには興味がなく、放課後、近くの公園に携帯ゲーム機を持ち寄っては暗くなるまで遊んでいた。
その時間が楽しかった。俺と、昂と、郁奈。いつも3人一緒だった。
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