第16話 余裕
俺以外のメンバーは、といえば、なぜだか全員、余裕だった。
「いや、80点だぞ?80点!!」
「そうだけど、大丈夫でしょ」
「俺も、80はいくかなって」
「うん」
どうやら、みんな数学は得意科目らしかった。
それだけじゃない、他の科目もとくに猛勉強しなくてもいけるらしい。
うちの高校は進学校とまでは言えないが、大学への進学実績も多く、成績優秀者も多かった。でも、まさか、俺以外のメンバー全員が優秀なんてこと、ある…?
「僚一、お前は仲間だと思ってたのに…!!」
「俺、結構、勉強好きなんだよね」
「快都だって、苦手じゃないだろ?塾の成績も良い方だったし」
「俺は、追い込まれないと実力発揮できないタイプなの!!」
「威張って言うことかよ」
「俺らも教えるから、頑張ろ!!」
「みんなで行こうな、夏フェス」
「おう!!」
とはいったものの…。やっぱり、今の俺は勉強に集中できる状態じゃなかった。
俺の性格上、中途半端は嫌だった。高坂とのことを、まずは何とかしないとな…。
そもそも、高坂は俺のことをどう思っているんだろう。
まあ、友達の一人、だよな。
「なあ、高坂って俺のことどう思ってんの?」
休み時間、教室で本を読む高坂に俺は直球で尋ねた。
一瞬、目を丸くした後、みるみるうちに両耳を真っ赤にした高坂はそのまま机に突っ伏して、動かなくなってしまった。
「えっ?えっ?何??」
「ちょっと、近江!あんた、郁奈に何したの!?」
「はっ?まさか、泣かせたの?」
「最低ー!!」
女子たちに一斉に取り囲まれて、弁解の余地もなく、俺はひたすら糾弾され続けた。
3時間目が始まっても、俺は高坂のことを考えていた。
授業に集中できるわけもなく、かといって、さっきの答えを聞く勇気もないまま、一日が終わった。
終わった、はずだった。
「近江、今、大丈夫?」
放課後、力なく机に突っ伏していた俺に高坂が呼びかけた。
「昼間のことだけどね…」
教室には、いつの間にか誰もいなくなっていた。
何を言われるのか、正直、怖くてたまらなかった。
「あたし、近江のことが好き」
えっ?
えっ…?
「いつ、気付いてくれるのかな、って、思ってたんだけど」
「気づくも何も…えっ、えっ??」
俺は頭の中が大混乱していた。何なら、嫌われたかとすら思っていたから。
「だから、その…付き合ってほしいの」
ああ、全部、言わせてしまった。馬鹿か、俺。
こういうのは男から言うもんじゃないのか。
言いようのない後悔だけが、俺の頭の中を渦巻いていた。
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