第12話 仮装パレード

学祭2日目は、午後から仮装パレードが予定されていた。


今にも雨が降り出しそうなどんよりとした曇天。

とにかく、終わるまでは…と、誰もが空を見上げては祈っていた。


俺たちのクラスは男子がタキシード風、女子がウエディングドレス風といった衣装だった。ウエディングドレスを見立てた衣装に扮した高坂郁奈が目の前に現れた時、俺は不覚にもドキッとしてしまった。


「快都。お前、今、郁奈ちゃんにドキドキしただろ?」

「えー、やばっ」

「してねえよ!」

「まあまあ。今日は、お前ら二人の結婚式だからな!」

「違えだろ!」


クラスの男子にからかわれ、高坂が嫌な気持ちになっていないかだけが心配だった。

ちらっと高坂の顔を覗き込むと、ほんのり赤くなった頬で俯いていた。

ほら。女子って難しいんだから、やめてくれよ、もう…。


廊下に出ると、着替えを終えた生徒たちで溢れていた。

まだ時間があったので、俺は1組の方を覗きに行くことにした。


僚一たちのクラスは、外国のアニメ映画のキャラクターに関連する姿に扮したものだった。男女で同じ衣装らしい。


「僚ちゃん、かわいい!」


小柄な僚一はクラスでも人気者らしく、女子たちから代わる代わる写真を求められていた。廊下の端の方でその様子を眺めていた俺に、僚一が気がついて手を振ってくれた。


「おうちゃんも一緒に撮ろうよ!」


僚一の携帯で、並んで写真を撮る。


「今、送ったからね」

「ありがとう」

「タキシード、かっこいいね!」

「僚一もかわいいな」

「ラブラブじゃん」


ふと見ると、准太が目の前にいた。大柄な体にかわいいキャラクターの衣装が不釣り合いで、何だか新しいキャラクターみたいな不思議な姿だった。


「准太も、似合ってるよ…」

「思ってないでしょ?」

「ブフッ」


思わず吹き出す俺と、不満そうな准太。かわいいって言われたいのか?



「そろそろ、出発するぞー!一旦、クラスに戻って、整列して」


先生の掛け声で、ぞろぞろと教室に戻る。それから、再び、廊下に出て整列をした。


仮装パレードは毎年恒例の行事で、クラスごとにテーマに沿った衣装を着て、大きな山車を引きながら、市内各所を練り歩くというものだった。今では、地域の人たちも大勢見に来る名物行事になっていた。


学校を出発し、まずは坂道を下っていく。

男子が中心になり、山車が勢いよく走り出さないように押さえながら慎重に進む。

結構な重さがあるので、ここからは体力勝負だ。


「男子、しっかり押さえてよー!」

「任せとけ!」


やがて、坂道が終わり、大きな道路沿いに出た。ここから、1時間ほどかけて山車を引いて街中を回る。平日の午後ということもあり、人通りはそう多くはなかったが、時々、こちらに向かって手を降ってくれる人もいて嬉しかったし、励みになった。

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