第8話 バンド名
「バンド名、どうする?」
学祭のイベント参加の用紙を眺めながら、まだ決まっていなかったバンド名について俺たちは頭を悩ませていた。
「何かいい案ないのか?」
「んー、かっこいいやつがいい!」
「例えば?」
「ザ・ブルーハーツみたいな!」
「いいな。ザ・はつけるか?」
「ザ・バンド」
「シンプルだな」
「日本語の名前は?」
「盆栽、とか?」
「渋っ」
「もっといい名前あんだろ」
「ザ・ブロックノイズ」
岸田がボソッと呟いた声を俺は聞き逃さなかった。
「何それ、いいじゃん」
「どういう意味?」
「意味はないけど…なんとなく」
「他に候補がなければ、これでいいんじゃね?」
こうして、俺たちのバンド名はザ・ブロックノイズに決まった。
「なあ、ブロックノイズって英語でどう書くんだ?」
「THE BLOCKNOISE」
学祭のイベント参加の用紙に、意気揚々とバンド名を書き込む。
「あとは、これを生徒会に提出するだけだな!」
放課後、俺たちは生徒会室に足を運んだ。
物事は早いに越したことはないと、早速、学祭のイベント参加の申請に来たのだ。
しかし、そんな俺たちの初ライブの夢はもろくも崩れ去ることになる。
「許可できません」
仏頂面の3年女子が言う。やけに偉そうだな、と思ったが、それもそのはず。
この人が今年度の生徒会長・
「どうしてダメなんですか?」
「現在、軽音楽部は正式に生徒会が承認している我が校の部活動ではありません。そのため、学祭のイベントへの参加を許可することはできません」
「えっ?でも、5人集まった時に部活動の申請書を出しているはずじゃ…」
「あっ」
思わず、声が出た。出してないわ、俺…。
「悪い、バイトでバタバタしてて出し忘れてた」
「マジかよ…」
「イベントの申請が出せるのは、6月末現在で部として承認されている場合のみになりますので」
今日は7月2日。一足遅かったか…。
廊下を力なく歩く俺を、励ますようにポンと背中を叩く昂。
「落ち込むなよ。そりゃ、初ライブができないのは残念だけど、俺たち、まだこれからいくらでもチャンスあるって」
「俺、三上先輩と一緒に学祭でライブがしたかったんだよ」
三上先輩は3年生だ。3回目の留年でまだかろうじて学校にはいるが、いつ卒業してしまうかわからない。それまでに、一緒に学校でライブがしたかった。
「飛び込みで参加とか、ダメかな?」
「生徒会を敵に回す気か」
「屋上でライブするのは?」
「それこそ、生徒会だけじゃなくて、先生も黙ってないぞ」
この頃、三上先輩はほとんど屋上に姿を現さなくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます