素顔のトモ君が超イケメンだった件について
ありま氷炎
☆
「えっと、どちら様?」
シャワーを浴びて出てきたら、そこにいたのは、超イケメンだった。
奥手なトモ君に合わせて、キスも付き合ってから1ヶ月。
そして2ヶ月後の今日、いよいよレクチャーしてあげようと、ホテルに誘われるように諮った。
酔ったふりをして、体を密着させ、ちょっと休憩したいと囁く。付き合ってから色々教えてあげたから、その意味はわかってるはずだ。
黒髪もさ男の黒縁メガネのトモ君だったとしても。
思惑通り、近くのラブホテルにトモ君は私を連れて行く。
シャワーを先に浴びるねと、気分が悪いはずの私が言うものなんだけど、そう言って、シャワールームに入った。だってベトベトしているのは好きじゃないし、いい香りを漂わせたほうがいいでしょ?
十分に体を洗い、しっかりとメイクした後、出てきたらそこにいたのはトモ君じゃなくて、超イケメンだった。
「いやあ、笑えるわ。シャワー浴びてもばっちりメイク。すっぴんも見せれないくらいブスなの?」
「は?」
「いや、あいつが女を教えてくれた女神とか言っていたけど、普通じゃん。いや普通以下?」
「え、は?」
なんか意味わからないけど、けなされている?私、普通以下とかひどい!
「傷ついた?お前だって、ひどいだろ。俺が童貞のオタクだと思ってさ、バカにした態度で。あいつは女神とか言っていたけど、ありえねー」
「えっと、失礼ですけど、あなた誰?さっきから失礼なことばかり!」
「わかんないの。俺、トモ君だよ」
「えええええ??」
は?こんなイケメンがあのトモ君と一緒なの。
っていうか顔もだけど、雰囲気も全く違うし、トモ君はこんな口悪くない!声が一緒だけど。
「あのさ、俺、眼鏡してメイクしてたの。落としてさっぱりだよ。ああ、2ヶ月間辛かったわ。今日で終わろうぜ」
「え、なに?」
「この2ヶ月、あんたの女神っぷりを見ていたけど、全然わからんかった。だからさあ、素顔をさらすことにしたの。好きでもない女とやるのも嫌だし」
トモ君だったイケメンはバスタオル姿の私に背を向けると、さっさと部屋を出て行ってしまった。
お金も払ったし(私持ちだった!)
だから、もったいないから一人でラブホで夜を過ごすことにした。
「うけるわ!」
なんか眠れなくて友達の麗子にその話をしたら爆笑されたけど、その後にまあ、当然の報いと言われた。
「いやなんで?」
「だって、あんたの態度なんかひどかったわよ。彼氏を見下すってどうなのよ。まあ、確かにもてない男とばっかり付き合っていたけど、なんか付き合ってあげてるって感じで見ていて最低だったし。まあ、トモ君よくやったって感じ?」
「なによ。それ!私達、友達でしょ」
「友達よ。だから言ってあげてるの。これに懲りて変な理由で彼氏を作るのをやめなさいよ。相手に失礼よ」
麗子はそれだけ言ってスマホを切ってしまう。
私は悔しくて、スマホをベッドに放り出して、何か飲もうかと禁断の冷蔵庫を開けた。ワンカップのお酒が入っていて、私は強くもないのに、それを全部飲んでしまった。そしたら気持ち悪くなって、トイレに走り、気がつくと意識を失っていた。
次に目を開けると超イケメンが視界に入ってきて、思わず体を起こす。すると馬鹿なことに彼の顎が私の頭にあたり、私たちはお互いぶつけた箇所をかばって、唸る。
「な、なんで急に起きるんだよ。馬鹿やろう!」
「って、っていうか、なんであんたがここにいるのよ!」
「忘れ物して戻ったらトイレで気を失っていたから、ベッドに運んだだけだ。感謝しろよ!」
「あ、ありがとう」
口は悪いが、このイケメンはトモ君の優しさを少し持っていた。
本当あの優しいトモ君がこいつを一緒なんて思えない。
こんな顔だけの男!
昔からイケメンは嫌いだった。だって、性格悪そうだし。なんか軽そうだし。だから、かっこ悪いけど優しい人を選んでつきあってきた。麗子はああいったけど、私ってそんな見下した態度してたのかな。
「なんだよ?」
少し気になって、この性悪イケメンに確かめることにした。
「あのさ、私って、あんたを見下していた?」
「ああ。付き合ってあげてる、感謝しなさいって最悪だったな。従兄弟がお前と付き合っていたことが信じられない。なにが女神だ」
本当だったんだ。
そんな風な態度、意識したことなかったのに。
っていうか、その従兄弟って誰?
「あの、従兄弟って誰?」
「雅夫だよ。マサ君」
「マサ君?ああ!」
一条雅夫くん、マサ君。
なぜか私と付き合っていくうちに、かっこよくなっていった人。そのうち、なんかかっこよすぎて別れてしまった。
イケメンは怖い。なんか緊張するし。
泣きながら別れないでって言われたけど、その泣き顔もかっこよくて、これはダメだと思った。
えっと、そのマサ君が私のことを女神だって?
なんで?
「腑に落ちない顔をしてるな。俺もそう。だけど、ちょっとわかった気がしてきた。悔しいけど。すっぴんのほうが可愛いのな」
「は?え?」
性悪イケメンはそう言いながら、私の頬に触れる。
いや、なに?
こいつ、私のこと嫌いっていってなかったっけ?
「うーん。本当に女神なのか、確かめたくなった。いい?」
「は?」
「だって、その気だっただろう。俺も今はそういう気分だから」
「お断わりします。誰があんたなんかと」
「なんで、俺こんなにイケメンなのに?」
「ああ!触るな!」
イケメンは嫌い。
私が好きなのは優しいブスメンだ!
部屋から性悪イケメンを追い出し、内から鍵をかける。
そうして私はどうにかイケメンを追い出したのだけど、数週間後付き合うことになった。
イケメンが嫌いと言い続け、彼はトモ君に戻ってくれた。
だからこそ付き合うことができている。
イケメンは怖い。
これは私の変わらぬ主張だ。
素顔のトモ君が超イケメンだった件について ありま氷炎 @arimahien
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