10話

「でも、そんなとき出会ったのが千歳だろう? 誰に対しても分け隔てなく優しくて、まるで天使のような人。・・・ぷっ、笑っちゃうよね。

お人好しって世の中で一番生きづらいのにさ。相手に親切したところで感謝するとは限らないのに。あぁ、見返りを求めてないのが千歳なんだっけ? 

だから、俺が嘘ついて好きって言っても、それを簡単に信じて、あげく、一番大切な身体まで俺に預けちゃって・・・」


「いい加減、その口を閉じろ。クズ野郎!!!!」


「君が怒っても、どうせ上まで届かないでしょ?」


「俺は・・・人間だ。お前と違って、自由に空を飛ぶことも、術を使って人を操ることも出来ない。お前が言ってた愚かで、醜くて、低俗で下等なクズな人間だよ。

好きな奴が幸せそうにしてたら、自分の本当の気持ちすら伝えることの出来ないチキン野郎だ。

でもな、それが人間ってものなんだよ! 好きな奴が隣で楽しそうに笑っていたら、それで満足だし、俺も・・・こう、ここらへんが幸せって、あったかい気持ちになるんだ。お前たちには一生理解出来ない感情かもな。

師匠が俺に言ってた言葉、テメーには一ミリも届いてなかったってことだな。

俺のことはどんなに貶しても馬鹿にしても構わねえ。

だが、師匠の・・・千歳のことを馬鹿にするのは、許せねぇ。

テメーは何があっても俺が倒す!!!」


俺は届かないとわかっていても剣を空に向けた。


「なんだ、この光・・・眩しい!」


「俺たちの身体が魔界へ帰って行く・・・!」


「なんだ、これ・・・」


俺は悪魔たちが消えていくのを見て、ふと剣を見た。

すると、剣は黄金に輝いていた。


「ふ、ふふふ、ふははは。面白い、実に面白いね。まさか君が伝説の剣士だったなんて。その光を浴びたら僕もただじゃ済まない。

だから退散するよ。またいずれ会おう。僕たち悪魔は君たちの油断した心に忍び寄り、いつかまた、この安全区域の門を開ける。それじゃあ、またね。伝説の剣士」


「待て! 逃げるのか、クズ野郎!」


かなりの数の魔獣と悪魔は俺の剣が光ると同時に姿を消していった。

そして、燃え盛っていた炎は消え、街は一瞬で元通りとなった。


俺の持っていた剣は、小さなナイフくらいのサイズまで小さくなってしまった。


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