9話

「思考回路が追い付いてないみたいだから僕から話すことにするよ。僕、実は悪魔なんだ。正確には魔王の息子。この安全区域を破壊するため、魔界からやってきました♪ってことで、理解してくれた?」


「・・・悪魔? 魔王の息子。あんた何言ってんだ。

師匠とは施設で出会ったって・・・!」 


「君、魔獣狩りしてるのに何にも知らないんだね。悪魔は人の心を操れたり、記憶を消したり追加したり出来るんだよ。

千歳ってただの人間じゃん? それはもう・・・簡単に術にかかるよね。いやぁー、人の良さそうな人間を探してたんだよ。

安全区域って門があるし、門番もいるわけじゃん? スパイの俺が一人で行ってもすぐに捕まっちゃうし。だから結婚相手を探してたってわけ。結婚すれば安全区域行きは確定だからね。それとこんなに長くいたのは、千歳や君、街の人が俺に対する信頼度をあげるためってね♪ 本当は術で街中の人を操っても良かったんだけど、それには強大なパワーが必要だからね。それに・・・何故か、君、導くんだけは術にかからなかったんだよねぇ。最初に会った時に使ったんだけど駄目だったみたいでね。千歳の一番近くにいる君に怪しまれたら、この計画も失敗に終わると思ったからこそ、こんなに時間がかかちゃったってわけ。・・・って、あれぇ、どうしたの?」


「術だとか、お前が悪魔だとか、魔王の息子だからとか、そんなのどうでもいい。

俺は剣士として、お前を倒すだけだ。それと最後に聞かせろ。

お前は今まで師匠の好きって気持ちを利用してきただけか? 少しでも情が沸いて、好きになることはなかったのか?」


俺は怒りを抑えるので必死だった。しかし、剣士たるもの冷静さを忘れてはいけない。

これは何度も師匠に教わったことだ。


「はい? 何、馬鹿なことを言ってるのさ。この僕が低俗な人間ごときに情が沸くとでも?人間なんて、愚かで、醜くて、低俗で下等じゃないか。

たった70~80年の命しかないのに、楽しそうに生きてさ。

人間なんて早く滅びればいいのにね。導くん、君もそうは思わないかい?

君だって、最初、施設にいた頃は僕と同じ考えだったはずだよ? 

なんで親がいない? 俺たちは捨てられたんじゃないか?

シスターだって、皆だって俺の目付きが怖いって近付こうともしない。

話してもいないくせに俺の何がわかるんだ? って」


「黙れ・・・」

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