8話

「思考回路が追い付いてないみたいだから僕から話すことにするよ。僕、実は悪魔なんだ。正確には魔王の息子。この安全区域を破壊するため、魔界からやってきました♪ってことで、理解してくれた?」


「……悪魔? 魔王の息子。あんた何言ってんだ。師匠とは施設で出会ったって……!」 


「君、魔獣狩りしてるのに何にも知らないんだね。悪魔は人の心を操れたり、記憶を消したり追加したり出来るんだよ。千歳ってただの人間じゃん? それはもう、簡単に術にかかるよね。いやぁー、人の良さそうな人間を探してたんだよ。


安全区域って門があるし、門番もいるわけじゃん? スパイの俺が一人で行ってもすぐに捕まっちゃうし。だから結婚相手を探してたってわけ。結婚すれば安全区域行きは確定だからね。それとこんなに長くいたのは、千歳や君、街の人が俺に対する信頼度をあげるためってね♪ 


本当は術で街中の人を操っても良かったんだけど、それには強大なパワーが必要だからね。それに、何故か、君、導くんだけは術にかからなかったんだよねぇ。最初に会った時に使ったんだけど駄目だったみたいでね。千歳の一番近くにいる君に怪しまれたら、この計画も失敗に終わると思ったからこそ、こんなに時間がかかちゃったってわけ。って、あれぇ、どうしたの?」


「術だとか、お前が悪魔だとか、魔王の息子だからとか、そんなのどうでもいい。俺は剣士として、お前を倒すだけだ。……それと最後に聞かせろ。お前は今まで師匠の好きって気持ちを利用してきただけか? 少しでも情が沸いて、好きになることはなかったのか?」


 俺は怒りを抑えるので必死だった。しかし、剣士たるもの冷静さを忘れてはいけない。これは何度も師匠に教わったことだ。


「はい? 何、馬鹿なことを言ってるのさ。この僕が低俗な人間ごときに情が沸くとでも? 人間なんて愚かで、醜くて、低俗で下等じゃないか。

たった70~80年の命しかないのに、楽しそうに生きてさ。人間なんて早く滅びればいいのにね。

導くん、君もそうは思わないかい?君だって、最初、施設にいた頃は僕と同じ考えだったはずだよ? なんで親がいない? 俺たちは捨てられたんじゃないか?シスターだって、皆だって俺の目付きが怖いって近付こうともしない。話してもいないくせに俺の何がわかるんだ? って」


「……黙れ」

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