6話

* * * * *


 それから、10年が経った。月日はあっという間に流れるものだ。俺も、もうすぐアラサーか……なんて呟く今日この頃。


 俺は、ある場所に立っていた。

 それは「秋月千歳」と掘られた墓石だ。

 7年前、俺の師匠は命を落とした。


 それは俺が剣士になってすぐに起きた出来事だ。あれは今でも忘れることは出来ない。残酷で、切なく、悲しい物語。


 あれから師匠は結婚して、とても幸せな日々を送っていた。俺は会えないだろうと思っていたが、俺が休日の時はときより、俺の様子を見に顔を出してくれた。


「導、聞いて! 旦那様が今日もね? ふふっ」


 会うたびに聞かされるのは結婚相手のことだった。気持ち的にはすごく微妙。だけど、師匠が幸せそうに話ならそれでいいかという自分もいた。

 それに師匠が楽しそうに結婚相手のことを話しているのは、俺も何故だかわからないが、少しだけ幸せな気分になった。あぁ、今の人と凄く幸せなんだな。本当に良かった。

 

 これなら俺が守らなくてもいいか。次の恋に行くのは、かなり時間がかかるかもしれないが、俺も次の恋に行くべきか。なんてことを考えていた。


 だけど、そんなある日、事件は起きた。俺が魔獣狩りから帰宅してすぐの事だった。


 『安全区域が燃えている』と近くの住人から聞いた。俺は慌てて、安全区域へと向かった。そこは師匠が住んでいるところだから。因みに俺は安全区域から少し離れた場所に住んでいる。そのため、俺が住んでいる場所から距離があった。


「無事でいてくれ、頼む……!」


 俺は走った。ただ、がむしゃらに。任務から帰宅したばかりで魔獣の血がついた服のままだったが、それも気にならないくらいだった。汗だくになっても、ただひたすらに走った。『どうか無事で』その言葉を頭で何度もリピートしながら。

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