2章

6話

* * * * *


「今日も疲れた・・・」


俺はベッドに倒れ込んだ。

体制を変え、仰向けに寝なおしては、さっき師匠に撫でられた頭に自分の手を置いた。


「これで最後かもしれないな」


なんとなくわかっていた。きっと今日を最後に師匠は俺の稽古相手はしてくれない。


あぁ、あの幸せな日々が懐かしいな。


あの時は難しいこともわからなかったから、師匠が言ってる言葉も理解してなかった。


大人になるってこういうことなんだな。

知りたくもないことを知り、聞きたくない言葉を聞かされ、時には傷つけられ、嘘をつくようになる。


それでも諦める気にはならなかった。ただ、幸せそうにしている師匠を困らせることもしたくなかった。


師匠が隣で笑ってくれる、それだけで俺は幸せだ。

・・・たとえ恋人になれなくても。


俺にとって、師匠にとって、これが全ての始まりであり、終わりでもある。


幸せはいつまでも続かない、世の中何が起こるかはわからないってことをこの頃の俺はまだ知らなかった・・・。

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