3話
「私、結婚したら剣士を引退しようと思うの。だから、貴方が来年、剣士になってる時、私はいないかもしれない」
「え……」
「それと今日も言うわ。本当に心から好きな相手が出来たら、名前の通り、貴方がその人を守って導いてあげるのよ。守るべき人がいたら剣士っていうのは、もっと強くなるんだから。ねっ、導。そろそろ帰らないとあの人が先に家に着いちゃうかもしれないし。それじゃあ、また明日ね導」
師匠は話し終わると、恋人の待つ家へと帰って行った。俺はその後ろ姿を、ただただ見つめるしか出来なかった。
もうすぐ結婚ってのはわかっていた。でも、まさか引退までするなんて。女性は結婚すると同時に剣士を引退出来るというルールがあった。
来年は一緒に戦えるって思ってたのに嘘だろ……。
俺が師匠に隠している『秘密』、それは……俺が師匠のことを好きだということ。これは尊敬でもライク的な意味でもない。一人の女性として愛しているんだ。
施設で出会ったその日、俺は本物の天使に出会ったかと思った。
なんで親が居ないのか、もしかしたら俺は捨てられたんじゃないか? 施設ではいつもそんなことばかりを考えていた。
だからこそ、施設で普通に暮らし、あげく笑顔でいる俺と同じ子供と上手く馴染めなかった。時には年下に理不尽なような怒りをぶつけたりして泣かせたときもあった。
そんなときだ、師匠が現れたのは。
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