第21話 たましいの拡張と上書き
女、マリア・テレジアはそこまで語り終えると、息を止め、口を閉じ、押し黙った。
もう涙は既に乾いていた。
『ふむ、それはなんとも
マリアは答えなかった。
『だが、その思いもここで終わりだ、余によってお前は殺されるのだ』
魔王は
「……わかってないわね」
マリアは杖を向ける。
『む? 余の魔法が解けたか』
「あなたはここで死ぬの」
『ふん、余の前ではお前の攻撃や魔法など効かぬ』
「違うのよ、禁術であなたは死ぬの」
マリアは言った。
「まさか!」
イリスが
「私と一つになるの、分かるでしょう」
マリアは言った。
「……! 魔王様、お逃げを!」
イリスは叫ぶ。
『ふむ……ふむ……できるかな? そんなこと? 余は魔王であるぞ』
魔王はあくまでも
「できるかできないかじゃないの。禁術で、あなたの魂は私に上書きされるの」
『その時、お主は、お主の体を捨て、余の身体となるということ。できるのか? お前は、魔王の体を手に入れるのだぞ』
「ふふふ、別にそれでいいわ。その後魔王領を滅ぼして、私も死ぬ。それでおしまい」
『そうか……だが……どのみち無理だの。余を倒す、余に魔法をかける? その禁術をどうやって? 無理だろう、お前は余に近づくことすらできぬ』
マリアは笑う。その、態度。
余裕を持った、魔王の態度。それが付け込む隙だ。関係ない。距離などこの魔法には関係ない。
マリアは嘘を付いていた。タオはマリアに抱き着いていたりはしていない。そんな必要はないのだ。その嘘は、マリアの無意識かそれとも意識的な嘘なのか。あるいは、ただの妄想だったのか。だが、この際どうでもいい。布石。魔王を
マリアは魔法を詠唱し始める。禁術だ。光。融合。否、拡張と上書き。
すべてはこの日、魔王を倒すため、マリア、タオ、カピンプス、ガロ、アブジ、勇者一行の旅路の終わりのために。そして光は降り注ぐ。
『何……』
部屋中を光りが覆い、マリアは、それを見いだした。拡張先を見いだした。
そして、今まさに、マリアは魔王を下す――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます