第一章 桃園の少女(二)
悧才さまは、薬をこしらえるのがお好きな方でした。もともと、病弱な殿下のためにお始めになったのだそうですが、すぐにその奥深さの
わたくしは、花木の世話にくわえて、悧才さまの薬づくりのお手伝いもさせていただくことになったのです。手伝いと申しましても、本当にささやかなものでしたが。悧才さまのお言いつけどおりに畑に水をやったり葉を摘んだり……そのうち薬づくりの簡単な下ごしらえもやらせていただくようになりました。あれはなかなかに楽しいものでございましたわ。そのときの経験は今でも生きておりますのよ。ほら、このお茶も、疲れに効く葉をひとつかみ加えております。もう一杯お注ぎいたしましょうかね。
悧才さまのご配慮のおかげで、青華宮での日々は楽しくおだやかに過ぎていきましたが、たったひとつだけ、不満がございました。
おわかりでしょう? 殿下にお会いできないことですわ。
青華宮に
馬鹿な小娘でございましょう? うっかりその気持ちを叔母にもらしてしまったときは、たっぷり一刻もお叱りをうけましたわ。そのような
ですから、あの日、殿下が小亭にいらっしゃったときのわたくしの驚きはいかばかりであったか、きっとおわかりいただけることと思います。
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