第103話〔The Summer Vacation・6〕

高安女子高生物語・103

〔The Summer Vacation・6〕                 



『MNB47 佐藤明日香の24時間』


 このありがたくも、あんたら、そこまでヒマなんかいな言うテレビ取材の話は、昨日ユニオシの事務所から実質の業務命令の依頼がきたもの。



 お母さんは嫌がったけども、お父さんは喜んでた。仕事柄、家に引きこもりみたいな毎日を送ってるお父さんにはええ刺激と宣伝の機会。


 いそいそと座卓の上に10冊ほどの自分の本を並べだす。低血圧のお母さんは、夕べ眠剤を飲んで早起きに努力の姿勢。

 うちは、夏休みは早起きの習慣がついてる(一時間でも早よ起きて、休みを満喫しよいう根性)ので、朝の6時にクルーが来た時には、すでに起きてた。



 クルーは寝起きのブチャムクレ明日香を撮りたかったらしいけど、残念でした。ハーパンにカットソーに、セミロングをポニーテールにして、お目目パッチリの迎撃態勢。さすがにお母さんも起きたけど、こっちは完全なブチャムクレ。三階で身づくろいと化粧にかかる。



「アスカちゃんは、いつも、こんなの?」

「はい。時間もったいないよって、夏休みとかは早いんです」

「あ、朝ごはん自分で作るんだ」

「はい。うちは家族三人やけど、起きる時間も朝ごはんの好みもバラバラ……え、お父さんも一緒に食べるて?」

 いつもは別々に食べてる朝ごはんをいっしょに食べる。ト-スト焼くとこまではいっしょやけど、お父さんはハム乗せてコーヒー。うちはトーストの上にスクランブルエッグにインスタントのコーンポタージュ。食後の麦茶は常温のにしといた。こないだみたいにお腹の夏祭り撮られたらかないません。

「もう30分早かったら、朝シャワー撮れましたよ」

 そう言うてから、メールのチェック。麻友だけが「お早うメール」で、美枝とゆかりは「おやすみなさい」のまんま。

「学校の友達とは、ずっとメールのやりとり?」

「はい、夏休みになってから、ずっとお仕事ばっかりで、クラスの友達とは会われへんさかい、お早うとお休みだけはやってます」

 それからFBのチェック。「お早うございます♪」と、取材クルーの写真付けて送信。

「ラジオ体操行きます?」

「アスカちゃん、ラジオ体操やってるの?」

「まさか、小学校までですけどね。たまにはええんちゃいます?」


 9時にカヨさんとこに行く約束したあるので、それまでの時間稼ぎ。


 ラジオ体操は近所の公園。


 テレビのクルーといっしょに行ったら、みんながびっくりしてた。高学年の子らは、昔いっしょにやった顔見知り。自分で言うのもなんやけど、高安が出した初めてのアイドル。自然な形でどこに行ったら、いい絵が撮れるかは承知してます。

 五年ぶりに子供らとラジオ体操。終わったらスタッフが用意してたカードにサインしたげる。ここで40分も尺とったけど流れるのは、せいぜい一分やろなあ。

 家に戻ると、お母さんがいつもの倍くらい身ぎれいにして、掃除と洗濯。「あら、やだ、いつの間に!」しらこいこと言いながらスタッフにお愛想。時間つぶしに両親のインタビュー。これもあらかたカットされるんやろなあ……親の努力がけなげに思えたころに時間。高安駅までスタッフの半分が付いてくる。

 日本橋(ニホンバシとちゃいます、ニッポンバシ)で堺筋線に乗り換えて、一駅恵美須町へ、カヨさんの家は初めてなんで、迎えに来てくれてることになってる。


 で、恵美須町の地上に出たらえらいことになってた……!

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