第102話〔The Summer Vacation・5〕

高安女子高生物語・102

〔The Summer Vacation・5〕           



 思わずサブイボが立ってしもた!


 長崎県のS市で、友達殺して、その死体の手首と首を切った女子高生のニュース!

「ゲー……!」

 こういうときには、かいらしい「キャー」は出てけえへん。我ながらオバハンのリアクションやと思う。

 そやけど、反応してる心は17歳。殺した子も殺された子も15歳の高校一年生。うちと一学年しか変わらへん。


「またか……」


 沸きたての麦茶に氷入れながらお父さんがポツンと言うた。それほどショックやないみたい。テレビのコメンテーターは、なんでかスマホのせいにしてしたり顔。

――やっぱ、コミニケーションの取り方が、この年齢では未熟なところにもってきて、今は、みんなスマホでしょ。分からないんでしょうね、距離の取り方。やっぱ、スマホというのは……――

「オレが高校生やったころもあった……」

 何十年前や?

「友達と喋ってたら、知らんオッサンが来て因縁つけよるんで怖なって一人で逃げた。心配になって戻ってみたら、友達は殺されてて首を切り落とされてたいうのがあったけど、結局殺して首落としたんは、そいつやった……」

 うちも、スマホに罪は無いと思う。サブイボ立ったんは、心のどこかで同じような鬼が住んでるような気がしたから。


――鬼て、わいのことか?――


 正成のオッサンが言う。正成のオッサンは、ちゃう意味で鬼や。

 人を殺して首まで落とすいうのは、ある意味心理的エネルギーの爆発やと思う。みんな、このエネルギーは持ってるけど、適度に火ぃ点けて燃やしてる。それが、ちょっと火の点き方の違いで爆発してしまう。持ってるエネルギーはいっしょや。せやからサブイボが立つ。エネルギーは鬼にもなるし、神業をおこすこともある。


 神業に成れ! 


 そない思うて、お母さんがUSJのハリポタで買うてきたバタービールのジョッキに氷をしこたま入れて麦茶入れて一気飲み。そのままお風呂に行ってシャワー浴びてたら、お腹が夏祭りになってしもた!

 急いで体拭いて、タオルを頭に巻き付けて、パンツ穿くのももどかしくトイレに駆け込む。日本三大祭り(祇園祭、天神祭、神田祭)に岸和田のダンジリがいっしょにしたみたいな夏祭り。

「エアコン点けっぱなしで、お腹出して寝てるからよ」

 トイレ出たとこでお母さんに怒られた。


 陀羅尼助を二人前飲んで、スタジオへ。難波からスタジオまで歩いて汗流したら、お腹も治ってきた。


「今日は、ちちんぷいぷいに選抜が出て顔売りにいきます。暫定的にリーダーは明日香。他のゲストはベテランの人ばっかりやから心配いらんけど、生やから気いつけて放送事故なんかにならんように。他のメンバーは勉強のために見学。終わったら戻ってレッスンと夜のステージ。よろしく!」

 市川ディレクターの説明で行動開始。


 番組では、やっぱり長崎の殺人事件が話題になってた。

 振ってこられたんで、朝思た心の鬼説を語る。メンバーも出演者も感心して聞いてくれた……とこまではよかった。

 調子に乗って夏祭りの話までしてしまう。


「ほんなら、明日香さん、パンツも穿かんとトイレに……!?」


 スタジオ大爆笑。この時、うちはMNBのお祭り女王という称号をいただく、その原因の半分はこれですわ。

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