第95話〔金の心〕
高安女子高生物語・95
〔金の心〕
こんな夢を見た。
どういうわけか、学校のプールサイドをグルグル歩いてた。誰も居てへん、そやけど学校の水着着てるよってに授業なんかもしれへん。かすかにみんなの声やら宇賀先生の声が聞こえる。やっぱり授業中。
うちが一人勝手にうろうろしてても、だれもなんにも言わへん。シカトとちゃう。みんなうちの存在に気ぃつこうともせえへん。
そのうち、胸がモゾモゾ(ドキドキとちゃう)してきて、あろうことか、水着を通してうちの心が出てきて、受け止めた手の上でプルンプルン。プルンプルンやけど、金色に輝いてた。せやからうろたえながらも、なんか凄いと思てた。
「うちの心は金でできてる!」
で、喜んでたら、その金の心が手を滑ってプールの中にポチャンと落ちてしもた。金の心はドンドンプールの底に落ちていって見えへんようになっとしもた。なんでかプールのそこだけが深くなってて、暗く見える。
「先生、心を落としました!」
そない言うても、先生はチラ見しただけでシカト。クラスのみんなは見向きもせえへん。
いつもやったら平気で飛び込めるプールやねんけど、プールには大きな穴が開いてて底が見えへん。心は、その穴の中に飛び込んでしもたみたい。
オロオロしてるうちに、プールの穴の中からヴィーナスみたいな女神さまが現れた。
「明日香さん。いま、このプールに心を落としたでしょう? 明日香さんが落としたのは、鉄の心? 銀の心? それとも金……メッキの心?」
これて、なんかに似てるけど、ちょっとちゃう。金は金で、金メッキやあらへん。せやから、うちは正直に言うた。
「三つとも違います。うちが落としたんは金の心です!」
「困ったわね。落ちてきたのは、この三つしかないのよ」
「せやけど、ちゃいます」
「でもね……」
「うち、自分で探します!」
そない言うて、水に飛び込もうとしたら止められた。
「そのままの格好で飛び込んでも、ここは、ただのプールよ。あの底の穴にはたどりつけない」
「どないしたらええんですか?」
「裸になりなさい」
「……裸みたいなもんですけど」
「ダメ、水着を着ていてはたどり着けないわ。それ脱がなくっちゃ」
そない言うたら、女神様は、スッポンポン。微妙なとこは、ごく自然に手で隠してる。
……うう、どうせみんなシカトしてるんや!
そない思うて、うちは裸になった。
「いやあ、あすかスッポンポンや」
「ヘアヌードや!」
「佐藤さん、裸になったらあかんでしょ!」
そんな声が聞こえてきたけど、うちは構わんと、プールに飛び込んだ。いったん顔を出して精一杯空気を肺に溜めると、うちは穴を目指して飛び込んだ。穴の中に入ろうとしたら、なんか怖なってきて、なかなか進まれへん。やっとの思いで穴に入ろうとすると、妙な抵抗感。それも、なんとか突き破って中に入ると、真っ暗で先が見えへん。だんだん息が苦しくなってくる。
――あかん、もう、もたへん!――
そこで目が覚めた。
ゆかりからメールが来てた。
――美枝のことは、心配いりません。なんとかまとまりつつあります。アスカは自分のことに集中して――
カーテンを開けると、台風一過の上天気、ちょっと寂しい心は押し殺して、MNB47の鬼のレッスンに出かけた。
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