第61話〔ラブホ初体験!〕 

高安女子高生物語・61

〔ラブホ初体験!〕        



 連休を持て余していた中尾美枝から電話。


「ねえ、ラブホの探検に行かへん!」

 なんでもゆかりとの約束が流れたのでヒマなので、うちのとこにお鉢が回ってきた。


で、第一声が、これ。



 オトコと行くのは、最終的なHが目的やけど、そういうときにラブホのグレードやら、オトコのセンス(まあ、こういうのは、オトコから誘うもんやし)を値踏みするために、学習しておこうというのが目的。

「オンナ同士でも、やらしいことせえへんやろね?」

 そう確認すると「ガハハ」と愉快そうで健康的な答が返ってきた。


 で、大阪市内の環状線某駅で降りて、大阪でも指折りのラブホ街に二人でおもむいた。


「なんかネオン点いてんと、普通のビジネスホテルみたいやね」

「こんな時間やから、入れるんよ。昼過ぎたら、もう空室ないやろなあ」

「あ、フロントがある……」

「あれは、法律対策上。部屋はこっち」

 やっぱ、美枝の方が詳しい。て、当たり前。うちは、こんなとこ来るのん初めてや。


 パネルにある部屋は、看板通り均一料金やった。で、半分以上が使用中なのには驚いた。


「ウワー、ショッキングピンク!」


 部屋に入るなり、部屋のコンセプトがピンクなのにタマゲタ。

「やっぱり、趣味のええ部屋は使用中やね。ま、基本的なシステムはいっしょやろから」

 ウォーターサーバーもピンク色やったから、ピーチのジュースでも出てくるのかと思たら、当たり前の水やった。

「明日香、なにショボイ水飲んでねんな。こっち、飲み物は一杯あるよ」

 コーヒー・お茶・紅茶・生姜湯・ココア・コンソメスープetc……。

「へえ、生姜湯や……」

 今里のお祖母ちゃんを思い出す。

「なにしみじみしてんのよ。ご休憩やから、時間との勝負やで」

 美枝は、そう言うとクローゼットの上からお風呂のセットをとりだして、放ってよこした。

「せっかくだから、いっしょに入ろ」

 美枝のノリで、そのままバスに。

 壁の色なんかは違うたけど、お風呂自体は、去年お祖母ちゃんのお通夜で入った葬儀会館といっしょ。

 二人で、ゆったり入れて、お風呂の中に段差がある。ガラス張りかと思てたら、拍子抜けするほど普通のお風呂。

「これは、フロントといっしょで、警察うるさいし、女の子には、この方が喜ばれる」

「ふーん……キャ!」

 油断してると、いきなり水鉄砲。

「アハハ、びっくりしたやろ。こういう遊び心が嬉しいとこや」

「もう、とりあえずシャワーして、お風呂入ろ」

 美枝のノリで、シャワーして、バスに浸かる。やっぱり女の子同士でも、変な感じ。ちょっとドキドキ。

「ほんなら、洗いっこしょうか」

 前も隠さんと美枝が上がる。ボディーシャンプーやらリンスやら、わりとええもんが二種類ずつ置いたった。二人で違うもん使うて感触を確かめる。違いはよう分からへんけど、うちで使うてるのよりはヨサゲやった。

「なあ、体の比べあいしょうや」

「比べあい?」

「修学旅行でも、お互いの体しみじみ観るてないやんか。二人きりやから、観察のしあいせえへん」


 なるほど、同じ歳の同じくらいの体格でも、裸になると微妙に違う。肩から胸にかけてのラインは負けてる。

「せやけど、乳は明日香の方がかわいいなあ。あんまり大きないけど、カタチがええ。ほら片手で程よく収まる」

 そっと、美枝の手で両方の胸を覆われた。風呂の鏡に映すと、丸出しよりも色っぽいし、自分が可愛く見える。


 それからは……中略……自分でも観たことのないホクロを見せてしもた。いろんなとこのカタチや色が違うのは勉強になった。


「明日香、ベッドにおいでよ」

 髪の毛乾かし終わると、美枝がベッドに誘う。

「え、あんた裸!?」

 掛け布団めくると、美枝はスッポンポン。

「あんたも……」

 あっという間に、バスローブ脱がされてしもた。

「ちょっとだけ練習しとけへん」

 言い終わらんうちに美枝が後ろから抱きついてきた。胸の先触られて、体に電気が走った。

「もう、びっくりするやんか!」

「今度は、明日香が」

 そう言うて、美枝は背中を向けた……。


 お互い感じやすいとこを確認したけど、下半身はやめといた。あくまで、勉強やねんさかい。


「この感覚知っとくことと、この感覚を愛情やと誤解せんことやね」

「せやね、Hの後にIがあるもんやけど、やっぱり愛が先にあらへんとね」


 そういう女子高生らしい恋愛論の結論に達して、うちらはご休憩時間ギリギリまでおってホテルを出た。


 実は、美枝から、ある話を聞いたんやけど、女の約束で言えません。


 ただ、外に出たとき、五月の風が、とても爽やかやったことは確かでした。

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