第55話『え、もう席替え……ラッキー!』

高安女子高生物語・55

『え、もう席替え……ラッキー!』       




 今日はガンダム(岩田武先生)の気まぐれで席替えをやった。


 四月もこの時期になると、年度初めのせなあかんことは、たいがい終わってしもてる。せやけど、木曜は定例のロングホ-ムルーム。ただボサーっとしてるワケにはいかへん。



「ほんまは中間テストまで、出席番号順の席やけど、もう二年生やし、適当に慣れてきたやろから、席替えしょうか?」



 みんなから歓声があがった。



 クラスいうのは、それ自体あんまりおもしろいことない。授業やら学校行事の便宜のために分けられてるのは、小中高と八年目になったら、よう分かる。お仲間の基本は、自然にできた仲良しグループ。だいたいクラスの中でできるけど、たまにクラスを超えてグループになることもある。ほんで、90%以上は男女別。いくら男女平等、機会均等やいうても、別々が、やっぱり自然やと思う。何年か前に小学校で男女混合名簿にしたけど、なんにも代わらへん。やっぱり男女に別れる。先生の仕事も複雑になるだけやさかい、二年ほどでヤンペになった。


「目ぇわるいとか、勉強したいから前の方に来たいやつは、手ぇあげろ」


 これは先生の担任としての「配慮はした」いうアリバイ。


 ガンダムは、この三月までは生指部長やってたさかい、そのへんにぬかりはない。好きこのんで前に行きたいヤツは……おった。近藤と土方いう女の子が手ぇあげた。単に目ぇが悪いんか、なんか人間関係かは分からへんけど、ガンダムは、この二人チェックしたやろなあ。


 席替えは、最初の十人まではクイズで決める。


「前の校長先生の名前は?」

 これは、不当人事やら恣意的な学校運営やって、三月でクビになった校長。ガンダムの恨みを感じた。

「今のAKBのセンターは?」

 くだけた質問もある。

「うちの担任はイケメンランク十段階評価で、何番目か?」

 これは、オッサンふざけすぎ。ガンダムはイケメンいうカテゴリーにもともと入れへん。でも無理矢理一番と言わせて、クイズを締めくくった。あとは黒板にあみだくじ書いて決めた。



「ほんなら、自分の机と椅子持って移動、始め!」


 三十三人の生徒が、一斉に机と椅子を持って八メートル四方の教室を移動。これだけで五分は潰れる。ほんで机動かすときの積極性なんかをガンダムは見てる。単に時間消化だけやのうて、見るべきは見てる。やっぱり、元生指部長、やることに無駄はない。


 この席替えで、うちの前が伊藤ゆかり、後ろが中尾美枝になった。


「よろしくね、明日香」



 美枝が気楽に声かけてきた。あんまり話したことはないけど、気楽なオネーチャン風。元気な子ぉで、声も大きい。いつもニコニコしてるけど、言いたいことはハッキリ言う。前のクラスでイジメやってた男子を凹ました武勇伝がある。

 前の伊藤さんは、落ち着いた優等生。で、この二人は一年の時同じクラスで、性格ぜんぜんちゃうのに仲がええ。

 積極的な美枝が、気ぃつこて間に入ったうちに声かけてくれたんが嬉しい。

「あたしら、チームAMYいうことにしよか?」

 伊藤さんが提案してきた。AMYて聞いたら一発で分かる。うちら三人のイニシャルを並べただけ。そのトップが明日香のAは、なんや気詰まりやなあ。

「この並べ方が一番呼びやすいのよ」

「チームエイミー、かっこええやんか!」

「ハハ、なんや照れくさいけど、嬉しいなあ」


 放課後、食堂の自販機のジュースでエイミーの発足式をやった。嬉しなったうちは二人にジュースを奢った。


 うまいこと奢らされたいう気ぃもあったけど、こうやって三人のバランスがとれていくんやろなあと思た。

 なんや、ここにきて二年生は、おもしろなりそう。


 初夏をを思わせる日差しが、ちょびっと眩しかった!

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