第18話〔ああ、なんで雨!〕
高安女子高生物語・18
〔ああ、なんで雨!〕
ああ、なんで雨!
目が覚めて、直ぐに雨音に気ぃついた。
なんで気ぃついたかというと、夕べ発作的に部屋の模様替えをしたから。
え、わけ分からん?
今から説明します。
あたしの部屋は三階の六畳。両親の寝室とは引き戸のバリアーがあるけど、エアコンの都合で、夏と冬は開けっ放し。今までは部屋の東側にベッドを置いてた。ここやと、両親が隣の寝室に入ってきたときに、ベッドの4/5が丸見え。この位置は子どもの頃から変わってないんで気にせえへんかった。
裸同然の姿でおっても、お父さんは男のカテゴリーの中に入ってないから、どういうこともなかった。
一昨日の晩、ちょっとハズイ事件があった。
芸文祭のことやら、最近会われへん関根先輩のことやらが頭の中でゴチャゴチャになってしもて、ボンヤリしてお風呂に入ってしもた。別に風呂で溺れたりせえへんかったけど、ベッドに潜り込んで違和感。
なんと、パンツを後ろ前に穿いてた。
で、仕方ないので、脱いで穿きかえた。不幸なことに、そこにお父さんが上がってきた。瞬間、お父さんに裸の下半身見られてしもた! 一瞬フリーズしたあと、お布団を被った。
「明日香も、女の子らしなってきたなあ~」
なに、この言葉!? うちのお尻見たから? それとも布団被ったリアクション? ハンパな言葉ではよう分からへん。そやけど、こんなハズイ気になったんは初めてや。
それで、模様替えになったわけ。で、頭がベランダのサッシのすぐ側なんで、カーテンを通して、雨音が聞こえてきたわけ。
「え、近鉄電車値上げ!」
雨の中高安駅に着いて、電車の吊り広告で気ぃついた。
前も言うたけど、うちの家には定期収入が無い。お母さんは「大学までは大丈夫」言うてるけど、娘としては気ぃ遣う。
知ってんねん。お父さんが、あんまり家出えへんのは、ひつこい鬱病のせいもあるけど、お金を使わんため……やと、思てる。
お父さんは、毎月銀行から生活費の自己負担分を下ろしてくる。十三万円。八万円はお母さんに渡して、自分は五万円。こないだまでは三万円やった。それをお父さんは、ほとんど使えへん。
なんで分かるかというと、時々お父さん、お小遣い入れた封筒からお金出しては数えてる。チラ見してるだけやけど、残額は月四万くらいのペースで増えてる。
知ってんねん。お父さんのお小遣いは名目で、家の非常持ちだしになってんのん。去年お婆ちゃんが死んだ時に、小遣い袋は薄なった。四十九日でも薄なった。
今年は、お婆ちゃんの納骨と一周忌、それに下水工事がある。高安のこのへんもやっと公共下水道になる。それはええことやけど、家の敷地に入る部分の工事と、浄化槽の埋め立ては自己負担。それがお父さんの負担になる。お父さんは他にも光熱水道、ネット代、電話代、固定資産税、都市計画税、なんかも払うてる。大型家電が壊れたときも、この非常持ちだし。辞めとうて辞めた仕事やない。うちは基本的には、お父さん可哀想や思てる。せやから、近鉄の値上げでもムカツク。
布施についたころに車内の暖房で濡れた制服が臭い出す。ファブリーズしてくんのん忘れてた。
制服て、めったにクリーニング出せへんよって、けっこう汚れてる。うかつなことに、冬休みにクリーニング出すのん忘れてた。まあ、三学期は短いよって、ファブリーズで、なんとかしのいでる。
――しかし、よう臭うなあ――
思たら、うちの前に居てるT高校の生徒の制服からも臭てる。
まあ、お互い様やと辛抱。
七時半、学校に着く。
なんで、こんな早いかというと、明日の芸文祭の朝練。
「お早うございます」
文字通りの挨拶。南風先生は来てたけど、美咲先輩はまだ。
まあ、ええわ。この演劇部とも、明日でオサラバや!
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