第6話 完璧な買い物とはお釣りとの相性である
「合計1456円になりまーす。」
佐々木の値段を告げる一言から一連の事件は始まった。
「あっ、、1455円しかない。」
小さなガマ口財布を携えた男はそう呟く。
どうやら彼の財布には1455円しか入ってないらしい。
皆さんにそんな経験はないかもしれないがレジでお金が足りなくて
顔を上げたとき店員と目が合う瞬間、、。信じられないほど気まずいのである。
「え、えとなにか商品お減らししますか?」
「は、はい、じゃあこのhey teeを減らしてください、、。」
「えーとではhey teeを減らして合計1277円になります。」
よしこれならばこのお客さんも払えるはずだ。
このお客さんのもとへトコロテンマート特製飲料水『hey tee』
が渡らないのは大いに残念だが致し方ない。
この気まずさを抜けられるなら安いものだ。
「払えない、、」
「え?」
「十円台と一円台が一緒の数字じゃないとお釣りが100円玉だけにならない!!」
佐々木は耳を疑った。
どうやらこのお客さんはお釣りを百円玉のみにすることに異常にこだわりがあるらしい。
たしかに百円玉は使いやすい。わからない気持ちではない、だがしかし
この気まずさよりも百円玉をとるというのか!!
このコンビニの夜勤には変なやつしか訪れないのか!?!?
「え、えーとではhey teeじゃない商品をお減らししますか?」
「はい、、じゃあこのカルパスを減らします、、。」
「お客様、カルパスは十円のため減らしても一円が合いません。」
「あ、、。たしかにそうですね。」
「ははは」 「ははは」
両者の苦笑いが店内に響く。
その刹那佐々木は気まずさを倍にした
お客さんの知能の無さとカルパスを軽く恨んだ。
「じゃあhey teeとカルパスい・が・い!をお減らししましょうか。」
「ではこの贅沢イチゴのシュークリームを減らします。」
「了解致しました、では贅沢イチゴのシュークリーム337円、、。」
佐々木はレジなど打たなくてもわかってしまった。
どうやらお客さんも同様気付いてしまったようだ
レジを打つとやはりその表示は私たちに絶望を与えるものだった。
「合計1118円になります、、。」
「そ、そうですか、、。」
お客さんの反応もとうとう薄さを極めてしまった。
そしてとうに極められてる気まずさと静寂の中
私は順々に商品たちを確認していった。
そして私は確信した。夜勤はいつも私に微笑まない、
そしてどの商品をとろうとお客さんの手持ちではお釣りを百円玉のみにすることは
できないということを。
あぁ神さま私たちに、いや私に!なぜこんな困難を与えられるのだ!
佐々木はあまりの切なさに声を出すことを放棄した。
そしてこの状況を打破できるかもしれないポンコツの店長を呼びに行こうとしたその時、
「あ、あのポッケに一円入ってました。」
このお客さんの一言により一連の事件は幕を下ろした。
なにも減らすことなく商品を買っていったお客さん、
気まずさから抜け出せた私。
そこに熱い抱擁や硬い握手はなかったものの、
確実に大切な何かは生まれたはずだ。
皆さんもそんな大切な何かをトコロテンマートで見つけてはいかがでしょうか?
ご来店お持ちしております、、。
第6話 end
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