5日目

「彼女」がさよならと言い背を向けた後に、「僕」を振り返って口を開き何かを言おうとしたところで、目が覚めた。



昨日の事を夢に見たせいで、よく眠れなかった。夢でも「彼女」の答えを聞くことはできなかった。


未だ、「僕」は「彼女」のことを何も知らない。


「彼女」の正体について考えてもみたが、結局何の答えも出なかった。



午後の公園に足を踏み入れた。

ビー玉は持って来なかった。

「彼女」が来てくれる保証はなかった。


ビー玉ごしでなくとも「彼女」を見ることができる自信はなかった。




「僕」しかいない公園。


蝉が短い命を震わせていた。

そよ風が「僕」の頰を撫でた。

太陽が地上を見下し嘲笑っていた。

影が「僕」を見つめていた。


白は、見えなかった。


「彼女」は来なかった。

理由はわからなかった。昨日の質問のせいかもしれないが、そうなると「彼女」は自分の正体を知られたくないのではないかと思った。


太陽が「僕」の上を通り過ぎ、地下に潜ろうとしていた。

「僕」は、夕焼けが照らす孤独な公園を後にした。

寂しげな赤が照らす道を、下を向いて歩いた。



その夜、雨が降り出した。

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