3日目
約束通り、「僕」と「彼女」はお弁当を持って公園に集まった。「僕」はビー玉を持って、「彼女」は白いワンピースをはためかせて。
今日は、海とは逆側にある森の川を辿ると言われた。所々に“秘密の場所”があるらしく、それらを案内したいらしい。途中に山道とぶつかる地点があるらしく、そこで昼食にしようと言われた。
「彼女」の白いサンダルを履いた足が、慣れたように石の道を歩く。「僕」の小さな足が危なげなく追いかける。
虫を捕れる場所、捕り方・コツ、美味しい実のなる木の場所、隠れられる場所、動物の巣など、たくさんのことを話してくれた。小さい頃には友人と来ていたが、そのうち一人で来るようになったらしい。
木登りもよくしていたと「彼女」は言った。けっこうお転婆だったそうだ。
そうこうしているうちに山道とぶつかる、開けた場所に出た。ちょうど昼頃だったのでお弁当と、途中で採った実を食べた。その実は程良く熟れていた。
「これ、すっごい甘い!美味しい!」
『そうでしょ〜。私も大好きなの!よく食べてたわ。』
「2つあるけど食べないの?」
『いいのいいの。君にあげる。私はいつでも食べられるから。ちなみにそれには魔を遠ざけるっていう力があるらしいよ。』
大好きだと言うのに食べない。
それを不思議に思ったが、「僕」は深く考えなかった。
一休みした後に、山道を歩いて帰った。地蔵が並んでいる場所があり、理由を聞くと、この山道を通る人を見守ってくれているのだと言われた。そう言った「彼女」は地蔵の前で止まることはしなかった。なぜか「僕」にはそれが、止まりたくないと言っているように見えた。
夕方の公園に帰ってきた。
なんとなく、夕陽に照らされる「彼女」をビー玉ごしに見てみた。
赤く、染まっているように見えた。
夕陽よりも深紅にちかく、絵の具よりも暗く、黒にちかい、赤。
慌ててビー玉を目から外すと、「彼女」は微笑んでいた。夕陽の赤に染まっていた。
明日は花火大会があるらしい。夜の公園に集まろうと言われた。家族が一緒に来るかもしれないと言うと、かまわないと言われた。花火大会を一緒に見る約束をし、その日は別れた。
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