2日目
今日も「僕」は「彼女」と会った。
昨日と同じく、ビー玉ごしの午後の公園に白いワンピース姿を見せた。
今日はどこへ行くのかと聞くと、海が見える場所まで行くと言われた。
『近くに海があるの。とは言っても、砂浜は無いから入られないんだけどね。丘の上からだったら見えるから行ってみようか。』
木々の間、獣道を歩いた。長らく放置されているであろう井戸や、壊れかけた祠などが草木の中に見えることがあり、「僕」は怖くてたまらなかった。「彼女」と離れないように必死になって後を歩いていると、「彼女」は小さく笑った。
『うふふ。怖いの?ここはなんだか不気味だもんね。私も子供の頃は怖くて通れなかったの。手、つなごうか?』
「...うん。」
手をつなぐと、少し安心した。つないだ「彼女」の手は、夏だというのにひんやりとしていた。夏の暑さにその冷たさは気持ち良く、「僕」はその理由を考えもしなかった。
『ほら、着いたよ。高い所から見るのもなかなか良いでしょ。』
その海はとても澄んだ色をしていた。岩に海鳥がとまり、陽を浴びていた。なぜか「僕」には、その景色が悲しげに見えた。海が泣いているような、自分も泣きたくなってくるような不思議な感覚にとらわれていた「僕」は、「彼女」の声に引き戻された。
『そろそろ戻らないと夕方になっちゃうよ。また手をつないで行こうか。』
「えっ、またあの道通るの?」
『そうなの。あの道しかないんだもの。頑張って帰ろうね。』
半泣きになる「僕」にむかって、「彼女」は手を差し出した。また、「彼女」の手は冷たかった。漸くそのことを不思議に思った「僕」は「彼女」に聞こうとしたが、できなかった。「彼女」の顔を見ると、何故だか聞いてはいけないような気がしたのだ。聞いたらどこかへ行ってしまう––そんな気がした。
昨日と同じぐらいの時間に公園に戻ってきた「僕」は、明日はお弁当を持って朝から案内してほしいと言った。「彼女」は快諾し、楽しみだと言った。
結局、手の事は聞くことができなかった。
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