鋼の国



 次の日の早朝、前日の夜にホテルで買ったサンドウィッチを食べてホテルを後にする。



「今日は鋼の国かぁ」



私は鋼の国が怖い。



別に治安が悪い訳ではないし、鋼の国出身のものにいじめられたことも無い。それにあの国は優しい人が多いことで有名だ。


なのになぜ怖がるのか、それは鋼の国の人達の見た目が怖すぎるからだ。非常に申し訳ないがこればかりはしかたない。



鋼の国の唯一の欠点絞り出してあげるとすれば見た目の怖さだろう。それほどまでに良い国なのだ、あそこは。



「人を見た目で判断するな」と親には口うるさく言われてきたし、私自身も見た目で判断し過ぎるのはよくないと思う。



 しかし、鋼の国の人々は祖先が鬼と言われる生き物であり、基本的に顔が怖い。それに、男女問わず体が大きく力が強い。オマケに声がバカでかい。



そして、入国審査官は国の中でも選りすぐりの強面が多く、いつも半泣きになる。



大きな体で鋭い目つきの人が、大きな声で厳しい口調で話しかけてくるのだ。普通泣くに決まってる。



私は少し憂鬱になりながら入国審査へ向かった。





「こ、こんにちは、青空郵便ひのき街支部の長距離配達科の者ですが雪の国への配達はのため鋼の国を通らせて頂きたいのですが…」



立っていたのは2mはありそうな女の人、おでこに角が2本生えている。ごめん、怖い。



(うぅこっわ、えっ、めっちゃ睨んでくるんですけど…)



「了解した。お仕事ご苦労である。今から荷物検査と身体検査を行う!荷物をここへ置き赤い扉の部屋に入れ!」



 荷物を置き言われた通り赤い扉の部屋に入ると、中には鋼の国の住人としては少し小柄な(といっても私よりも大きい)女の人がいた。



「身体検査をおこないます。体を触りますが、身体に触ると痛い怪我などはされていますか?」



と、事務的な質問をされる。ごく普通の質問のはずなのに眼力のせいでとても怖い。



「いえ、大丈夫です。よろしくお願いします。」







 何とか無事に入国審査を通り、ホテルに向かう。鋼の国は細い路地が多くあり何とも言えないごちゃごちゃ感がある。景観で行けば私の1番好きな国だ。



鋼の国は様々な職人達の住む国で、食べ物の匂いよりも、金属やオイルの匂いがする。働く人達の声がそこら中に響いて活気のある国だ。



(この国は私の1番好きな国なんだけどなぁ)



私は昔から声の大きな人や大柄な人が苦手だ。20年以上生きてきて克服できなかったのだからもうどうしよもないだろう。




 予約していたホテルにチェックインし、ベッドにダイブする。朝6時頃に出発したのにもう20時過ぎだ。



「相変わらず高品質のベッドだぁ」



鋼の国は何から何までクオリティが高い。安いホテルでも高級ホテル並のふかふかベッドに広いお風呂、そして冷蔵庫の中のものは全て部屋代に入っているため無料なのだ。



この国は海の国に次いでお酒が美味い。でも今は勤務中だし、お酒飲んだら12時間は空の運転が出来ないため、せっかくある無料の酒を飲むことは出来ない。



 お酒も飲めないし、正直このまま眠りたいが何か胃に入れておかないと旅の途中で墜落することになるかもしれない。



そう思いホテルに着いているお店にサンドウィッチを買いに行った。どこの国でもサンドウィッチにハズレはない

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