十数年後の夜話会ー1

とある大学の屋上――



瀧聲は一人フェンス越しに夜の街を眺めていた。

明かりがキラキラ光り、街全体がまるで生きているかのようである。




「おっとこんな時間に何してるんだ?」


背後から急に声をかけられ、瀧聲は後ろを振り返る。


「アヤメ……」


瀧聲に声をかけたのはアヤメという青年だった。

どことなく風雅な雰囲気をまとう彼もまた人間ではないが、瀧聲は未だにその正体を知らない。

二人はある事件をきっかけに知り合い、それ以来時折こうして会っては話をするのである。




「仕事帰り?」


「あぁ。やっと終わったんでね、ちょいとここに立ち寄ってみたのさ」


帽子の鍔をくいっとあげるアヤメ。

彼は使者という役割を担っており、時空を超えて人に物を届けることを役目としている。



「で、そういうお前さんは何してるんだ?珍しく何も食べていないようだが?」


半分からかうように微笑むアヤメに、瀧聲は少しため息混じりに答える。



「僕イコール食べてると思ったら大間違いだよ。」


「フフッそんなの分かってるさ……何か考え事か?」



飄々とした笑みを浮かべつつも、核心をつくアヤメの言葉に「流石だね」と言うと瀧聲は再び街に視線を向けた。


「思い出すことがあってね。クリスマスのネオンを見てたら何となく……ねぇ、街外れにある屋敷って知ってる?」



「あぁ、あの幽霊屋敷のことか?」


「幽霊屋敷……」




言葉を繰り返し呟いた瀧聲は振り返るとアヤメと向き合う。



「その幽霊屋敷について教えてくれないか?……アヤメなら知ってるんでしょ?」


じっと見つめられたアヤメは「うーん」と頬をかくとため息をつく。



「確かに知ってはいるが……。お前さん俺を情報屋か何かと勘違いしてないか?」



「いや?……でもアヤメ何でも知ってるじゃないか」


「少なくともお前さんよりはな。何か利用されてる感じがするんだがまぁ、いいか」



そう言うとアヤメは説明を始めた。

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